参院選立候補者の横顔 福岡選挙区

 22日に公示された参院選で、福岡選挙区(改選数3)には過去最多の16人が立候補し、論戦を繰り広げている。各候補者の経歴や人柄、政治信条を紹介する。(届け出順)

脳裏に働き詰めの父

古賀之士氏(63歳)立民現職

 30年以上勤めた地元民放テレビ局を退職し、議員の道に転身した。アナウンサー時代は人気情報番組の総合司会を担当。経験を生かし、演説では身近な問題から、国政のテーマに鋭く切り込む。巧みな話術と表現力は今も健在だ。

 政治を志した背景には、脳裏に焼き付いた父親の姿がある。奨学金を返しながら、朝から晩まで働き詰めで家族を支えた。「父のように苦労する人を1人でも減らしたい」。奨学金を巡る政策などの話題になると、語り口が自然と熱を帯びる。

 幸せを感じるのは、無心になれる料理中。骨から仕込む豚骨ラーメンと、「あるものでなんとかするメニュー」が得意という。

市民運動に限界感じ

先崎玲氏(65歳)諸派新人

 長年携わった右派系の市民運動に限界を感じ、昨秋の衆院選に続く国政選挙のチャレンジを決めた。「おかしいことをおかしいと言う。そのためには政治の力が必要だ」

 高校中退後、美容院に住み込みで働き、通信教育で資格を取得。以来、美容師として腕一本で生きてきた。30歳で店を持ち、今では30年以上通ってくれる常連客もいる。店を長く続けられた理由は「カットでは負けんからね」。はにかんた表情で胸を張る。

 出身は熊本県だが、16歳から住む福岡市への愛着は強い。当選したら「福岡を、天神だけでなく地方も活性化させたい」。飾り気のない語り口の中、言葉に力を込めた。 

心折れず3度目挑戦

熊丸英治氏(52歳)N党新人

 3度目の国政挑戦。「顔を売っていかないといけない」。落選を繰り返しても、政治への熱は高まるばかりだ。

 久留米市出身。高校卒業後、東京で10年ほど暮らし、雑誌ライターなどを経験した。政治家を目指す理由は「高収入だから」と本音を隠さない。ただ、主張は明確だ。5年ほど前に英国などを旅した経験から、日本の刑事司法制度が「警察、検察、裁判所が一体化している」と感じ、改革を訴えている。

 座右の銘は「精神一到何事か成らざらん」。「学校の先生に昔言われて、良い言葉だなと思った」と笑う。両親を乗せてドライブし、景勝地を巡るのがストレスの発散法だ。

ギターを提げて訴え

福本貴紀氏(49歳)社民新人

 就職氷河期世代の一人。正規、非正規を問わず、職を転々とした。生活苦で精神を病み、自ら命を絶った友人もいる。「弱い立場にある人に寄り添える社会に変えたい」。大学卒業後に憲法を本格的に学び、「政治に憲法の理念を根付かせるべきだ」とかねて思いを強くしていたことも、立候補を決めた理由という。

 毎日8時間、街頭活動で主張を訴えている。ギターを首から提げた独特のスタイル。大学時代に音楽を始め、20代は路上ライブに没頭した。十八番はジョン・レノンの「イマジン」だ。

 歴史好きでもある。理想の政治家は西郷隆盛。器の大きさを尊敬する。西郷の残した言葉「敬天愛人」を座右の銘にしている。

妥協せずに命を守る

秋野公造氏(55歳)公明現職

 医師から参院議員になって12年。「政治でなければ救えない命がある」との思いで走り続けてきた。新型コロナウイルス対策では政府が推し進めようとした治療薬に疑問を持ち、別の薬の活用を主張。「たった1人で旗を持ち、針のむしろに座る思いだったが、命を守ることに妥協はしない」と信念を貫いた。

 幼少期にぜんそくとアトピーに苦しみ、「同じ悩みの人に役立ちたい」と考え医師を志した。臨床医から厚生労働省の医系技官に転身し、主に薬害対応に従事。「被害者に寄り添うのが政治」と実感した。

 趣味は参院議員になって始めた剣道。「稽古では打たれてばかり。でも一歩前に出る勇気がついた」

中学生の言葉を胸に

大田京子氏(43歳)国民新人

 県議を2期経験し、今度は国政に挑む。政治家としてチャレンジを続ける背景には、しんきゅう師として患者の心と体に向き合った日々がある。

 大学を卒業後、衣料品会社に就職。信頼する人の勧めで、30歳でしんきゅう師に転じた。印象に残っている患者は、ある女子中学生。家庭のさまざまな悩みを打ち明け、「家に居場所がない」と漏らした。「人を根本から癒やすには、社会を変えないといけない。救いの手を差し伸べられる制度を作りたい」。県議時代は、児童虐待防止の政策に力を入れて取り組んだ。

 私生活では、子ども3人の母親の顔を持つ。座右の銘には「笑う門には福来る」を挙げた。

住み込み修業も経験

対馬一誠氏(62歳)無所属新人

 仕事は歌手。出身地の長崎県・対馬を題材にした曲などが持ち歌だ。新型コロナウイルスの感染拡大で業界は打撃を受けたが「今こそ社会には音楽が必要」と痛感。「音楽庁の設置」を掲げ、立候補を決意した。

 故郷の振興に強い思いがある。東京都在住ながら、長崎県の離島を応援する団体で活動。福岡選挙区で立候補したのは、離島出身者が多く住む福岡なら、共感が広がりやすいと考えたからだ。

 会社勤めを経て39歳でデビューした。歌手修業では厳しい住み込みも経験。けれども「苦労とは思わなかった」と振り返る。尊敬する歌手は五木ひろしさんと郷ひろみさん。「歌う国会議員」を目指している。

根気強さで徹底調査

組坂善昭氏(75歳)諸派新人

 自分の会社で手がける再生可能エネルギー。認定手続きの不透明さに疑問を抱いた。持ち前の「根気強さ」を発揮し、情報公開請求を駆使するなどして徹底調査。これが政治の世界を志す動機にもなった。「何年かかっても、納得するまでやり遂げる。再エネを主力電源として健全に発展させ、国民が負担する再エネ賦課金を減らしたい」

 高校卒業後、すぐに父を亡くし、18歳で家業の精肉店を継いだ。スーパーの台頭や牛肉輸入自由化の荒波にもまれながらも、業務用のチャーシューやミンチなどのヒット商品を生み出し市場を開拓してきた。

 「絶対にできるんだとの思いで挑戦することが大事。なせば成る」と信じる。

「普通の母」の目線で

奥田芙美代氏(45歳)れいわ新人

 「3人の子どもを育てる普通の母親」と自身を分析する。その目線で感じた社会への疑問が、活動の源泉になってきた。

 福岡市出身で、2011年の東京電力福島第1原発事故をきっかけに東京から糸島市に移住。同市が30キロ圏に入る九州電力玄海原発の再稼働反対を唱え、周りの母親たちと市民運動を展開した。自分の子どもが悩んだ経験から、理不尽な「ブラック校則」の廃止運動にも力を入れる。

 1月に党代表の山本太郎氏の集会で発言したのが目に留まり、出馬を打診された。「自分の子だけでなく全ての子どもに笑ってほしい」と覚悟を決めた。ピアノ教室を主宰するが、今は選挙に専念する。

築いた人脈が財産に

龍野真由美氏(49歳)維新新人

 イベントや結婚式の司会者として25年以上働き、今は会社を取り仕切る立場にある。業績はコロナ禍で一変。月の売り上げが最大で前年同月比98%減にまで落ち込んだ。知人に相談する

 「政治を変える側にならないか」。悩んだが「会社や同業の仲間のために」と立候補を決断した。両親は驚いたが、今は一番の応援団だ。

 大川市出身。アルバイトも含め、さまざまな職種を経験した。専門学校の講師として、司会術や話し方を教えたことも。仕事を通じて築いた幅広い人脈は、かけがえのない財産になっている。

 趣味は散歩や観劇。日課のストレッチで体調を整え、選挙戦を乗り切る。

動画の登録10万人超

野中しんすけ氏(35歳)諸派新人

 看護師として病院や老人ホームに14年間勤務した。今春、政治団体「参政党」に誘われ出馬を決意。「新型コロナウイルスのワクチン関連をはじめ、政府の情報開示が不十分な現状を変える」と意気込む。

 動画をインターネットに投稿する「ユーチューバー」として、健康やコロナをテーマに情報を発信し続けている。「臆測ではなくデータを基に分かりやすく伝える」がモットー。視聴登録者は10万人超を誇る。

 大分市出身。身長184センチで、高校時代はバレーボール選手として国体に出場した。今は福岡市に妻、2歳の長男と暮らす。「子どもに『父ちゃん』と呼んでもらっている」と顔をほころばせる。

少年時代抱いた疑問

真島省三氏(59歳)共産新人

 大学時代に世界の矛盾を感じ、政治を志した。「人間にはこれだけの科学技術があるのに、なぜ戦争をしない知恵がないのか、貧困を克服できないのか」

 安全保障の在り方に疑問を抱いたのはもっと前の少年時代だ。長崎県佐世保市の出身。米軍基地が市の中心部近くにある。「基地がなくなれば、佐世保は港湾都市としてもっと経済発展できるはずだ」。強い思いは政治家になっても持ち続けている。県議や衆院議員を経験したが、「平和の追求」を一貫した政治活動のテーマに掲げる。

 本屋大賞に輝いた戦争小説「同志少女よ、敵を撃て」を読んだ。「若い作家が戦争に向き合った作品。感動を覚えた」という。

無欲の人の教え宝に

 大家敏志氏(54歳)自民現職

 2期目を振り返り「めちゃくちゃ大きかった」と感じる経験がある。長野選挙区選出で党の参院幹事長を務め、2019年に死去した吉田博美氏に「特別補佐」として仕えたことだ。

 「参院のドン」と呼ばれた実力者ながら大臣の声が掛かっても固辞し「無欲の人」と呼ばれた吉田氏。その政治手腕を近くで見つめた経験は「宝」だ。厳しく、しかし人情味あふれた故人の薫陶を受け、「丁寧に説明して結論を出す、強くて優しい政治家」が自身の目標になった。

 永田町を忙しく走り回る毎日だが、スーツのアイロン掛けは、欠かさず自身でこなす。しわを伸ばす技術は「秘書に講義する」ほどの腕前だ。

バスケで鍛えた脚力

江夏正敏氏(54歳)諸派新人

 小学生で「自衛隊は必要だ」と訴え、大人から「政治家を目指したら」と勧められるような子どもだった。政治団体「幸福実現党」で役職を歴任。6度目の国政選挙に挑む。

 北九州市出身。大学生のころ、党の支持母体である宗教法人の本に出合い、人生が決まった。自慢は、中学、高校時代にバスケットボールで鍛えた脚力。今でも趣味はマラソンで、支持母体が設けた政経塾の塾長時代には「政治家は体力が必要」と塾生の必須科目にした。

 妻、1男2女の5人家族。格言「一隅を照らす」を好む。「家庭や職場などそれぞれ自分の場所で光っていれば、それは間違いない人生だ」と信じる。

母親の悩みに耳傾け

和田昌子氏(41歳)N党新人

 働きながら2人の息子を育てている。同じ環境で頑張る人の代弁者になりたいと決意。国政にチャレンジすることにした。

 北九州市出身。准看護師として病院に勤めるなどした後、東京でスポーツ選手やタレントをマネジメントする会社を立ち上げた。数年前、近所の市議と知り合いになったのがきっかけで「自分にも何かできるんじゃないか」と政治家に興味を抱いた。今は交流サイト(SNS)を通じ、母親たちの悩みに耳を傾ける。

 「思ったことは何でも口にする性格」と自己分析。好きな言葉は「失敗は成功のもと」。子どもと一緒にスポーツ観戦に出かけると、忙しくてもリフレッシュできる。

恩返しに故郷で出馬

真島加央理氏(40歳)N党新人

 結婚を「仕掛ける側」として数多くの出会いをサポートしてきた経験を踏まえ「政治の力で、多くの人が幸せに結婚できる社会を実現したい」。これが国政を目指す理由だ。

 高校卒業後にニュージーランドに留学し、ホームパーティーなどで多くの人と交流したことで「人と縁をつなぐ」大切さを感じた。その後、大阪で、男女が知り合う「街コン」を企画する団体に参加。現在は、東京で婚活パーティーを催す会社の代表を務める。

 春日市出身。18歳まで過ごした故郷への「恩返し」にと、福岡選挙区で立候補することにした。休みの日は友人と遊覧船でクルージングを楽しみ、気分転換している。


 政党の略称 自民=自民党、立民=立憲民主党、公明=公明党、維新=日本維新の会、共産=共産党、国民=国民民主党、れいわ=れいわ新選組、社民=社民党、N党=NHK党

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