核禁会議の成果 廃絶目指す確かな一歩に

 核兵器廃絶の流れを国際社会に定着させる。その道は険しいが、実現に向けた確かな一歩としたい。

 核兵器禁止条約の第1回締約国会議はいかなる核の使用や威嚇も認めず、核廃絶を目指す「ウィーン宣言」を採択した。ウクライナに侵攻したロシアが核使用も辞さない脅威に直面する中で、廃絶への「行動計画」もまとめた意義は大きい。

 今後、核保有国が条約に加わる場合は10年以内に核兵器を全廃するよう求める。具体策を準備して条約に実効性を持たせるためだ。

 批准国を増やすことも確認した。人類や環境に甚大な被害をもたらす核兵器の危険性に対する認識を広げ、国際世論を喚起する。

 特筆すべきは開会日が近づくにつれて参加国が増えたことだ。核の現状への強い危機感の表れだろう。条約批准国は会議直前に3カ国増え、65カ国・地域となった。

 米国の核戦力に依存し、条約を批准していない国からもドイツ、オーストラリアなどが議決権のないオブザーバーとして参加国に名を連ねた。

 ドイツ代表は演説で、条約に参加できないと断った上で「建設的な対話に関与し、協力の機会を模索する」と批准国と協調する姿勢を示した。

 こうした国々の行動は、同じ米国の核の傘に入る日本政府の不参加を際立たせた。しかも、被爆の惨状を知る唯一の戦争被爆国の不在である。

 政府は参加を見送った理由に、全核保有国が条約を批准していないことを挙げる。

 ドイツのように自国の意見を表明しながら、非保有国や核廃絶運動に関わる非政府組織(NGO)の声に耳を傾ける。こうした行動こそ、政府が掲げる核保有国と非保有国との「橋渡し役」の姿ではないか。日本は期待された役割を放棄したに等しい。

 長崎県被爆者手帳友の会会長を務める医師の朝長万左男(ともながまさお)さん(79)は、会議の演説で生涯にわたる苦しみに触れ、こう語った。「被爆者がこの世からいなくなる前に、世界の人々に私たちの人生を理解してほしい」。世界が共鳴した被爆者の声に真っ先に応えるべきは日本政府であろう。

 岸田文雄首相は8月、核保有国も参加する核拡散防止条約(NPT)の再検討会議に出席する。来年の先進7カ国(G7)の首脳会合を被爆地・広島で開くことも決めた。

 政府が核禁条約に前向きになれば、被爆の実相はこれまで以上に広く世界へ伝わる。会議で議論された核使用や核実験による被害者の支援は、日本の知見が生かされる。

 このまま背を向け続けるようでは、条約に反対する米国への同調と受け取られ「核兵器なき世界」実現への意志が疑問視されかねない。

 ウィーン宣言は核保有国の同盟国に「核兵器依存を減らすための真剣な措置を取っていない」と指摘した。この点も謙虚に受け止めるべきだ。

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