新型コロナ対策 もっと論じるべき争点だ

 ロシアのウクライナ侵攻を受け、参院選に向けた有権者の関心も安全保障と物価高に集まりがちだ。大切な争点がかすんではいないだろうか。

 政府の新型コロナ禍対策の検証と今後の感染症対策の在り方である。

 パンデミック(世界的大流行)が始まった2020年こそ、国内の感染拡大はある程度抑えることはできた。その後は変異株のまん延により感染者、死者とも急増した。

 各地の保健所の業務負荷は極限まで膨らんだ。感染症対応病床が不足し、多くの在宅療養者が生じた。自宅で症状が急変し亡くなる人もいた。感染症の専門医がいる病院と一般病院の連携もなかなか進まなかった。

 この2年余りを振り返ってみて、多くの課題があることは否定できないはずだ。

 3回目のワクチン接種が進んだこともあり、現在の感染状況は落ち着きを見せてはいる。ただし、福岡県で26日ぶりに新規感染者が千人を超えるなど、増加傾向に転じた自治体もある。不穏な兆候だ。

 感染力が強い新たな変異株が現れると、瞬く間に感染者が急増することは、オミクロン株で体験済みだ。

 パンデミックはまだ続いている。警戒を緩めず次の感染爆発にも備えねばならない。

 参院選の公約で各党は、保健所の体制強化、検査・医療体制の整備といったコロナ対策の拡充を掲げている。しかし、具体性に欠ける項目も目につく。もっと踏み込んで説明してほしい。

 政府の有識者会議がこれまでの新型コロナ対応を検証した報告書を提出した。既に社説で指摘した通り、短期間でまとめられた報告書に、対策の効果や意思決定過程に対する掘り下げた検証を見いだすことは難しい。

 「内閣感染症危機管理庁」や、米国の疾病対策センター(CDC)をモデルとする「日本版CDC」の新設といった参院選に向けた目玉政策を与党が打ち出すための下地づくりという印象も拭えない。

 報告書を踏まえて、政府や各党が今後の方向性や課題を時間をかけて分析する作業があったとは言えず、国会審議もおざなりだった。

 複数の党が公約で、感染症対策の国の司令塔機能強化を掲げる。確かにコロナ対策では、自治体と政府の現状認識にずれが度々生じ混乱を招いてきた。それでも、地方自治や私権の制限にもつながる国の権限強化に関わる改革である。慎重な制度設計が欠かせない。参院選での論戦は格好の機会となるはずだ。

 日本版CDCの創設も複数の党が主張する。政府案では国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合するという。新たな日本版CDCはどんな役割と業務を担うのか。有権者がイメージしやすいよう、より具体的な説明を求めたい。

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