NATO新戦略 世界の分断避ける結束を

 ロシアにウクライナ侵略を諦めさせ、中国など権威主義国の暴走にくぎを刺す狙いは理解できる。それが高じて、対立を先鋭化させないようにしてもらいたい。

 北大西洋条約機構(NATO)は首脳会議を開き、中長期的な安全保障の指針「戦略概念」を12年ぶりに改定した。欧州にとって第2次大戦後最大となる危機に直面し、これまでの内容を大きく転換させた。

 象徴的なのはロシアの位置付けだ。クリミア半島併合から現在のウクライナ侵略に至る経過を踏まえ、「戦略的パートナー」を「最も重大かつ直接の脅威」に捉え直した。

 具体的な防衛力強化策として、緊急事態に対処する「即応部隊」を4万人から30万人規模へ増員する。北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟手続きを進めることにも合意した。加盟後の構成国は32に増える。

 ロシアのプーチン大統領は両国の加盟について「領土問題もなく、脅威も与えていない」と述べながらも、NATOが部隊展開などに踏み切らないようけん制する。

 日本にとってより重要なのは、NATOが戦略概念で、海洋進出や台湾への威嚇を繰り返す中国に初めて言及し、「安全保障、価値観への挑戦」と警戒感を示したことだ。中国への不信を募らせている米国の意向が強く働いたとみられる。

 三つの核保有国に囲まれた日本の安全保障環境を考慮すると、欧州とインド太平洋地域の安全保障を連関させるNATOの姿勢は歓迎すべきだろう。

 日本とNATOはここ10年間、海賊対処の共同訓練をはじめとする海洋安全保障や、サイバー防衛で関係を強めてきた。今回の首脳会議には岸田文雄首相が日本の首相として初めて出席し、韓国やオーストラリアなどとともに「パートナー国」としての新たな関係を印象づけた。

 ただ、世界最大の軍事同盟であるNATOがアジアへの関与をどのように拡大するかは明確になっていない。日本が協力するとしても、安全保障政策の原則から逸脱しないようにすべきだ。

 NATOが中国とロシアへの対抗を鮮明にすれば、アジアの緊張を高めかねない。

 中国は「欧州の対立をアジア太平洋に持ち込もうとしている」と警戒する。NATOの出方次第では相応の対応を取ると反発している。

 アジアの多くの国々は、日本との連携を強めるNATOと中国の対立が激化することは望まないだろう。

 日米欧の動きに対抗して、中ロはインドなどとの新興5カ国(BRICS)の結束を図る。この協力枠組みにイランやアルゼンチンが加わる意向を示している。

 中国とロシアの結束が強まり、世界が深刻な分断に向かわないためには、対話の努力を続けなければならない。

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