「文通費」見直し うやむやでは許されない

 参院選の公示直前まで開かれていた通常国会で果たされなかった約束がある。

 国会議員に毎月100万円を支給する「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の使途公開と、未使用分の国庫返納だ。時代錯誤の議員特権の見直しをうやむやにしてはならない。

 旧文通費は「公」の文書発送や通信などに充てるのが本来の趣旨だった。しかし、領収書の提出義務はなく、選挙活動や私物購入といった目的外に使ってもチェックが利かない。税金もかからず、「第2の歳費」と呼ばれてきた。

 昨年10月の衆院選後、月に1日しか在職していなくても満額支給されることを新人議員が批判し、国会で見直し論議が始まった。与野党は通常国会の会期中に結論を出すことを確認していた。

 月の在職日数に応じて日割り支給できるよう4月に法律を改正したが、通常国会中に与野党が合意できたのはここまでだった。

 あきれたのは、法改正に合わせて使途を拡大したことである。支給対象を「国政に関する調査研究、広報、国民との交流」に改めて解釈の幅を広げ、条文から「公」の文言を削除した。

 これでは見直しどころか、議員にとっての使い勝手を良くした改悪に他ならない。

 それ以降はやる気を失ったと言われても仕方のないありさまだ。遊興費や選挙資金への転用は認めないと、当たり前のことを確認しただけで、懸案の使途公開などを棚上げしてしまった。

 自民党総裁の岸田文雄首相は5月下旬の国会答弁で「いつまでと(期限を)区切って議論をすることではない」と結論先送りを容認した。

 いったい何に時間がかかるのだろう。仕事に要した経費は領収書を添え、使途を明らかにして精算する。世間の常識に合わせることが、なぜすぐにできないのか。

 議員特権を温存するために時間稼ぎをしているようにしか見えない。議論を放置するのは無責任だ。このままでは政治への不信が一層高まることを与野党問わず、肝に銘じるべきだろう。

 一連の経緯ではっきりしたことは、世間の常識とかけ離れた国会議員の金銭感覚だ。「政治とカネ」を巡る不祥事は後を絶たない。本来ならば政治にカネがかかる現実にこそメスを入れなければならないのに、このままでは到底おぼつかない。

 旧文通費の見直しに後ろ向きな国会の姿勢を見ると、有権者が100万円の使途に目を光らせる必要性はむしろ高まったと言える。各党は参院選後に議論を再開し、速やかに領収書付きの使途公開を実現させるべきだ。

 旧文通費問題への姿勢は政党や政治家の公私の分別を知る手がかりとなる。参院選の選択にも有効な視点だ。

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