通知表の「所見」記入回数、減ってもいい? 働き改革で削減の動き

 「漢字、計算を丁寧に練習しています。きちんと身に付く量が増えました」-。教員が学期ごとに子どもの成長や課題を通知表内で伝える「所見」について、教員の業務軽減の一環として、記入回数を減らす動きが福岡市の小学校などで広がっている。ただ「家庭からは見えない我(わ)が子の姿を知りたい」と学期ごとの記入を望む保護者の声は根強い。九州の主要自治体にも聞いてみたが、その対応は割れている。 (竹中謙輔)

 「3学期ごとの所見を学年末の1回にします」。7月上旬、小学6年の子どもがいる女性=福岡市=は学校から説明資料を受け取った。説明会で担任にも聞いたが「急な変更で私たちも驚いている」と言われた。

 市教育委員会は4月、教員の働き方改革の具体例として「所見欄を学年末の1回のみにする」ことなどを小中学校に文書で通知した。導入するかどうかは校長が最終的に判断する。

 終業式の21日、所見の記入がない通知表を女性の子どもが持ち帰った。女性は「教員の負担軽減は賛成だが、所見を減らすことで子どもの変化を見過ごすことはないのか」と疑問を抱く。

面談に切り替え、通知表配布減も

 福岡市内の小学校は144校で、このうち3学期制は89校。授業時間の確保などを目的とした2学期制が55校に増え、通知表の配布回数を減らす学校も出てきた。市教委は「2学期制導入や通知表の配布回数、所見の記入回数は法律などに定めがなく、各学校の判断になる」と説明する。こうした中で、現場の判断は割れている。

 ある3学期制の小学校では、本年度から所見を書くのは1、3学期に限定。2学期は通知表も配布せず、保護者との面談に切り替える。校長は「所見を望む保護者の意見もあったが、面談でもよいという声もあって決断した」と話す。

 2学期制の小学校に聞くと、10月と3月に通知表を配布し、所見は2回記入。校長は「子どもの様子が具体的に伝わる書き方を目指している」という。校長が担任の時は、1人の所見は200字が目安。手書きで10~30分かかった。「2学期制になって通知表も2回となり、教員の負担は減った。所見は2回を維持する」という。

「◎○△だけでは表現できない」

 ほかの自治体の小学校はどうか。長崎市は2018年ごろから、3学期制の中で1学期は所見を記入しない学校が増加傾向にあり、その分を面談で補う。熊本市では教員の業務削減を理由に、21年度から3学期制の中で通知表の配布を2回に削減し、所見も2回に減った。佐賀市の大半の小学校も所見入りの通知表を2回にしている。

 一方で、福岡県久留米市や大分市、鹿児島市も所見の3回記入を維持する。久留米市教委は「所見を減らすことは今まで議論したこともない」と説明。鹿児島市のある小学校の校長は「◎・○・△の3段階評価だけでは表現できない部分を文章の所見で補っている。評価と所見の二つをワンセットにしないと保護者や児童に届かない」と話す。

 

アンケートの意見

 残してほしい「成長感じられた」

 削減仕方ない「激務考えると…」

 小中学生の通知表に教員が子どもの様子を書き込む「所見」を削減することについて、西日本新聞「あなたの特命取材班」はアンケートなどで意見を聞いた。

 アンケートは21日から実施し、41人が回答。所見の在り方について3択で尋ねたところ、「毎学期あった方が良い」が5割強と最多で、「面談があれば無くてもよい」と「減ってもしょうがない」がほぼ同じ割合だった。

 今回の1学期、小学生の子どもの所見がなくなった福岡市の女性(45)。「学級内の係など、家では絶対見せない様子が所見では書かれている。『リーダーシップを発揮するタイプ』なんて初めて知ったこともあった」と残念がる。

 「過去の通知表を見返し、たびたび子どもの成長を感じていた」(福岡県大野城市の44歳女性)、「子どもに向き合う時間を削る働き方改革は間違っている」(同県筑前町の51歳女性)といった意見もあった。

 一方で「所見欄はあった方が良いが、先生の激務を考えると削減は仕方ない」と福岡市の女性(47)。福岡県宇美町の女性(46)も「面談の方が直接質問でき、子どもの様子が分かりやすい」と書いた。

 先生の声も紹介する。同県糸島市の中学の男性教員は「生徒一人一人の良さを伝える努力をするので、意義がある」と指摘。一方で「先生にとっては疲弊する業務で、特に若手には負担だ。所見以外でも保護者と連絡を取り合える関係づくりが不可欠だ」とした。

▶アンケートの意見詳報

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