公益性かプライバシーか…死者の「個人情報」 国と異なる自治体判断

 「個人情報なので教えられない」。戦争遺留品の持ち主をたどる中で、自治体などから時折こうした言葉を聞く。終戦から77年。調査の壁になっているのが「個人情報保護」を巡る考え方だ。本来、死者の情報は法の対象外だが、自治体では保護対象のケースは少なくない。識者は「プライバシーと公益性をあらためて検討した上で制度を運用すべきだ」と指摘している。

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 個人情報保護法は、個人の権利や利益を保護するために2005年に施行。個人情報を「生存する個人に関して、特定の個人を識別できる情報」と定義している。死者については、情報開示請求などで主体となり得ず、プライバシーなどの人格権も認められない-といった理由で対象外だ。

 しかし自治体の個人情報保護条例では死者も保護対象とする場合が少なくない。個人情報保護委員会による20年の調査では、都道府県で63・8%、市町村で57・4%に上る。中央大の宮下紘教授(情報法)は「多くの住民情報を預かっていることが背景にある」と指摘する。

 自治体は相続などで関係者から死者についての情報照会を受ける。部外者からの開示請求などに備え、死者の情報に関しても積極的に保護するようになったという。ある職員は「亡くなればすぐ保護の対象から外すのは乱暴では。死者も適正な管理が必要」と話す。

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 来年度施行の改正個人情報保護法は、自治体の個人情報保護制度について共通のルールを規定する。死者の情報については「個人情報に含めて規律することは許容されない」とした。

 沖縄県は改正法に先駆けて県個人情報保護条例を改正。個人情報の定義に「生存する」を付け加えて国の制度に合わせた。

 ただ改正法では、自治体が条例とは別に、地域の事情などに応じて死者の情報の取り扱いに関する基準を定めることは禁じていない。法改正後も、死者の情報がすべて保護されなくなるというわけではない。

 そもそも、個人情報保護法は学術研究や報道目的での情報提供の制限を除外している。今回の「遺留品の持ち主捜し」という目的で、戦没者の情報はどう取り扱われるべきなのか。宮下教授は「目的外利用を禁じるなど一定のルールを設けた上で原則的に開示されるべきだ」と主張する。

 戦没者の情報は歴史の検証などで公益性が高い。一方で、死者にも人格権を認めて尊重すべきだという意見もある。また、戦没者がもし戦争犯罪に加担していたら、戦没者の情報が遺族の人格権の侵害を引き起こすこともありうる。

 宮下教授は「公益性と死者や遺族への配慮のバランスを取ることが重要だ」と指摘している。(黒田加那)

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