概算要求基準 歳出膨張の歯止めどこに

 めりはりの利いた予算をつくるためのルールなのに、あれもこれもと例外扱いする項目が並ぶ。これでは歳出拡大に歯止めはかからない。

 来年度政府予算の概算要求基準が閣議で了解された。各省庁が財務省に予算要求する際のルールである。省庁は今月末までに要求を提出し、年末に向けて予算編成作業が本格化する。

 歳出全体の上限は10年連続で設けなかった。あらかじめ歳出の上限などを定める「シーリング」(英語で天井の意)を実施したのは過去のことである。天井がなくなり、財政規律の緩みは否めない。

 概算要求基準の骨格は例年通りだ。社会保障費は自然増に抑える。岸田文雄政権が力を入れる「新しい資本主義」の実現などには、総額4兆4千億円規模の重要政策推進枠を用意した。

 重要政策推進枠への要求は、省庁が政策に使う「裁量的経費」を削減した額の3倍まで認める。これで予算の重点化を図る狙いだ。

 例年と異なるのは、別枠扱いの乱発である。増額が見込まれる防衛費などの具体化は「予算編成過程において検討する」と先送りしている。

 防衛費については、自民党が北大西洋条約機構(NATO)加盟国並みの国内総生産(GDP)比2%以上を念頭に大幅な増額を目指す。政府が予算編成の方向性を示した「骨太方針」にも「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」とある。

 現在はGDP比1%程度の防衛費を5年で倍増するなら年1兆円ペースで増やさねばならない。中期防衛力整備計画の改定待ちだが、金額先行の議論で真に必要な防衛力の整備につながるのか疑問だ。

 別枠扱いは他にもある。長引く新型コロナ禍対策、資源高に伴う物価対策、脱炭素、デジタル、食料を含めた経済安全保障なども特に重要な施策と位置付けられ、金額を示さずに要求できる「事項要求」の対象となった。

 事項要求の内容は年末までに精査するとはいえ、制限がないため、歳出拡大につながりやすいのは確かだ。

 例外扱いを各省庁に都合よく使われないように注意する必要がある。施策の名前だけ変えて予算要求し、中身はこれまで通りという手法がまかり通ってきたからだ。

 安易な看板のかけ替えは認められない。財務省に厳しいチェックを求めたい。

 予算編成では財源の確保も重要である。歳入不足を国債発行に頼る公債依存度は本年度当初で4割に迫る。大規模な補正予算を編成すればさらに跳ね上がる。

 政府は国と地方の基礎的財政収支プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する目標を掲げる。最新の政府試算では楽観的な見通しでも26年度にずれ込み、赤字から抜け出せないシナリオもある。財政再建の努力を怠ってはならない。

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