少年院を出て2日後の犯行…出院判断は正しかったのか 福岡商業施設刺殺事件

 福岡市の商業施設で女性を刺殺したとして当時15歳だった少年(17)に懲役刑を言い渡した福岡地裁の判決は8日に控訴期限を迎える。裁判では、かつて入っていた少年院での教育効果や保護観察所への引き継ぎがうまくなされたのかなど、事件直後から指摘されてきた疑問点は明らかにならなかった。出院からわずか2日での犯行であり、再発防止に向けた対応の検証は必須。ただ所管する法務省はその実施の有無について遺族にすら明らかにしていない。

 「知りたいことを知ることができなかった」。殺害された女性=当時(21)=の母親は判決後の記者会見で悔しさをにじませた。裁判で明らかになった経過はこうだ。

 少年は幼少期から周りへの暴力が収まらず、小学3年から親元を離れて児童自立支援施設などを転々とした。2019年から1年間過ごした少年院(2カ所)では「薬を処方され、副作用がひどく、指導とかにあまり参加できていなかった」(被告人質問)。

 裁判所の依頼で心理鑑定を行った大学教授は証人尋問で、事件の背景に家族からの虐待によるトラウマ(心的外傷)があると証言。1カ所目の医療少年院について「4カ月しかおらず、トラウマやアタッチメント(愛着)障害のケアとしては短過ぎる。投薬治療のみだったのではないか」と疑問を呈した。

 転院先の少年院では「怠惰な生活を許した。腫れ物に触るようにしていたとうかがえる」。両施設での教育について「適切な処遇がなされていない。やるべきことをやっていなかったと考える」と総括した。

 母親の元に戻る方向で調整が進められたが、出院する直前で母親が拒否。急きょ引受先となった福岡県内の更生保護施設から入所翌日に抜け出し、事件を起こした。少年は母親と暮らせなくなったことについて「すごいがっかりというか、残念な気持ちになった」と振り返り、更生保護施設への入所は「前向きになれなかった」と語った。

      ◇

 出院の判断は正しかったのか。更生保護施設に対して少年の情報が丁寧に伝わっていたのか-。被害者の母親は今も疑問は拭えていない。法務省からの明確な答えはないという。

 同省は取材に「一般論として、出院者が重大な事件を起こした場合には、当時の対応について内部で検討することはあるが、個別の案件については少年や関係者のプライバシー保護の観点から明らかにする予定はない」と回答する。

 元家裁調査官の須藤明文教大教授(犯罪心理学)は「社会に対して説明がないままだと、少年院の教育は効果がない、少年法が甘いという言説を招きかねない」と懸念する。九州大大学院の武内謙治教授(少年法)は「自治体や民間も含めて多くの機関が連携して再犯防止に取り組むため、プライバシーに留意した上で社会全体で情報を共有し、検証する仕組みをつくる必要がある」と話す。 (田中早紀)

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