【こんにちは!あかちゃん 第19部】自治体の役回り 西米良の挑戦<2>住民に任せ施設生かす

観光交流施設「おがわ作小屋村」。かやぶき屋根が目印 拡大

観光交流施設「おがわ作小屋村」。かやぶき屋根が目印

手作りの七夕飾りでもてなす「おがわ作小屋村」の従業員

 《ハコモノを指さし、誰もがうれしそうに語る。「あん屋根はですよ…」。宮崎県西米良村が2009年に開設した観光交流施設「おがわ作小屋(さくごや)村」を訪ねると、真っ先にかやぶき屋根が目に飛び込んできた。地元・小川地区の人たちにとって、何よりの自慢なのだという》

 さかのぼること6年。「作小屋村」オープンを翌年に控えた11月末の日曜日、住民たちはカヤ刈りに精を出していた。役場職員らも加わり、総勢約40人。背丈より高いカヤを倒すのに四苦八苦しながら2・5ヘクタールを刈り取った。公民館ではお年寄りたちが「若(わ)けとが頑張っちょるから」とカヤを束ねるひもを約3200本分、切りそろえた。

 「カヤは自前で」。村側は施設整備に当たり、住民側にそう提案した。カヤを購入したところで、総工費1億3千万円は大して変わらない。村の狙いは、住民を巻き込んでハコモノに命を吹き込むことだった。

 ソフト面も任せた。住民代表と役場職員で準備委員会を結成し、食事メニュー、食材の生産態勢、地区全体の景観づくりなど一つ一つ話し合って決めた。

 オープン後も会社形式は採らず、住民で知恵を出し合う方式を続けようと運営協議会を立ち上げた。最後まで残っていた職員1人は12年に引き揚げ、「作小屋村」は村の手を離れる。

 当初から協議会に関わる上米良秀俊さん(61)は「自分たちでどんげかせんといかんと思うようになった」と振り返る。

 《土台はつくった。あとは任せる-。そうした村の役回りが、住民に責任感を芽生えさせた。同時に、かやぶき屋根に象徴される手づくりの温かみを醸し出し、年間2万6千人の観光客をはじめ、訪れる人々を引きつけていく》

 福岡県から移住した富井俊さん(27)もその一人。「地域おこしを仕事にしたくて。ここなら一緒にできそうな気がしたんです」。大学院時代に小川地区を研究するプロジェクトに参加したのを契機に、卒業と同時に「作小屋村」で働き始めた。

 そのうち、専門の土木を生かして空き家対策を考えるようになる。村には民間アパートや不動産会社がない。「せっかく村に興味を持っても住む所を見つけるのが難しい。空き家をうまく使えたら」。ところが家主は「盆正月には帰るから」「知らない人に貸すのは…」と消極的。手つかずの家を減らし、住居や交流の場に再生する仕組みづくりを描くようになった。

 移り住んで3年目の今年4月、いったん村を離れた。「空き家バンク制度」が進む山梨県の高校で臨時教員をしながら改修された空き家に住み、地域おこしの現場をのぞいている。

 少子高齢化が進む地域では空き家が増え、対策に頭を悩ませる自治体は多い。民間の財産だけに強制力が効きづらい側面もある。「1年後には村にノウハウを持ち帰るつもりです」と富井さん。自分たちでどんげかする-。「作小屋村」で学んだ姿勢に、村側も期待を寄せる。

 《「作小屋村」にも課題はある。おばあちゃんたちとの触れ合いを楽しみにして来る人が増えた半面、団体客が押し寄せ「ゆったり過ごす平成の桃源郷」のコンセプトが揺らいできた。ムラを支える施設であり続けるには…。かやぶき屋根の下、住民たちの話し合いが始まっている》 


=2014/07/16付 西日本新聞朝刊=

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