【こんにちは!あかちゃん 第19部】自治体の役回り 西米良の挑戦<3>子育て支援 未来に投資

8月の出産を楽しみにする小河詩乃さんと夫の勇樹さん 拡大

8月の出産を楽しみにする小河詩乃さんと夫の勇樹さん

 宮崎県西米良村唯一の村立保育所「ふたば園」には村全域から48人が通う。この春、大学を卒業した宮崎市出身の安藤晴香さん(22)は、ここを就職先に選んだ。

 「自然いっぱいで子どもに目が行き届く。こんなところで働きたかった」。卒論研究でへき地の保育所を訪れ、子どもとじっくり向き合える環境が気に入った。他の職員4人と1歳以下の10人の子を担当している。

 働き始めると、保護者がよその子でも関係なく褒めたり叱ったりするのに気付いた。地域ぐるみで見守っているぬくもりを感じる。参観日には夫婦そろって参加する姿も目立つ。「お父さんが作った」という弁当を持ってくる子も。村は共働きがほとんどで、家事や子育てに積極的な男性が多いという。

 「働きたい」から「自分の子もここで育ててみたい」へ。安藤さんはそう思い始めている。

 《自然豊かで人が温かい。半面、村には産婦人科病院や高校がなく、都会とは違った不便さや経済的負担が伴う。「村で産み、育てるのは大変」との声を想像して歩き回ったが、聞こえてきたのは「村の支援があるから大丈夫」。何が都会との差を補っているのだろう》

 8月に出産を控えた小河詩乃さん(21)は、車で1時間半かけて宮崎市内の病院に通う。切迫早産の恐れから週1、2回受診した時期もあった。これら妊娠に関わる費用は、里帰り出産も含めて村の助成対象となる。

 村外への通院は体力的、時間的な負担だけでなく、車の燃料代もばかにならない。これをカバーするのが助成だ。村には小児科病院がないため、子どもの医療費も無料となっている。

 「お金のことが不安だったから、すごく助かります」。村外出身の小河さんは、産んだ後の支援も充実していると知り、胸をなで下ろしている。

 5人の子がいる坂本哲也さん(42)も「助成がなければ育てられませんでした」と語る。

 出産祝い金、未就学児のいる家庭への金券(月8千円分)の配布…。この春には、長女を宮崎市内の高校に進学させることができた。下宿代など月10万円ほど必要だが、就学支援手当と奨学資金の計6万円が大きな支えとなっている。

 坂本さんはUターン組。「子どもを故郷で育てたかった。妻を説得して帰ってきてよかった」

 《住民のデメリットを補うのが自治体の役回り。地方の財政が厳しい中、対象者が少ない村ならではの条件もあるとはいえ、それにしても手厚い。なぜそこまで? 村に尋ねるとこう返ってきた。「出生率がV字回復したフランスの支援に比べれば微々たるもの。将来、地域を担ってくれる子どもたちに投資するのは当然です」》


=2014/07/17付 西日本新聞朝刊=

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