【こんにちは!あかちゃん 第19部】自治体の役回り 西米良の挑戦<5完>住民参加で自立目指す

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おけを拭きあげる朝風呂会メンバー

すしの具を袋詰めする児玉ニシキさん

 《「少子化非常事態宣言」が15日、全国知事会議で採択された。国と地方が抜本的な対策を強化する必要性を訴える内容だ。政府も人口減少の克服に取り組む地方創生本部の設置に向け、準備を始める。慌ただしく動きだした国や都道府県。その先を宮崎県西米良村が走る》

 露天風呂を囲む森から鳥のさえずりが聞こえ、ゆたーと(ゆっくりと)くつろげる。その名も村営温泉「ゆたーと」。年間14万人前後の観光客が訪れる西米良村の中でも人気スポットの一つとなっている。

 2010年には748人まで減る-。20年前、国の人口推計で、村はこう宣告された。当時は1600人台。非常事態への危機感が、人口減対策を本格化させる。それが桃源郷づくりであり、ワーキングホリデー制度であり、1999年に開業した「ゆたーと」だった。

 「ゆたーと」の朝は住民ボランティアの清掃で始まる。20~80代の59人が参加する「朝・夕風呂会」。村の呼びかけで結成され、従業員も加えた曜日別の班がある。朝は清掃後に風呂に入れるのが「報酬」だ。

 土曜の朝を担当する男性3人は、午前5時半からおけや椅子を洗い、タオルで拭き上げる。その一人、黒木正近さん(66)は開業以来、通い続けているという。「早起きが大変だけど、責任感もありまして」。よく聞けば副村長。間もなく退任という時期だったが「体が動く限り続けますよ」と話していた。

 《村は「平成の大合併」で、住民の要望を受けて合併しない選択をした。代わりに積極的な住民参加を呼び掛ける。目指すのは「自立」。役場職員も例外ではなく、一人の村民として地域活動に入り込んだ。そうして高め合った「自分たちでどんげかせんと」の意識が人口減対策の推進力となってきた。6月末現在の人口は1244人だ》

 「昨日は朝2時に起きて祭りに出す赤飯を作ったとよ」。94歳の児玉ニシキさんも“現役村民”として精を出す。畑仕事の傍ら、温泉などで販売する加工食品を作る「みどりグループ」に週1、2回顔を出している。

 この日は仲間2人と昼前に煮しめ50食分を仕上げ、子どもたちの給食のこんにゃく作りに取りかかっていた。さすがに力のいるイモを練る作業は、最年少の75歳に任せた。

 児玉さんが仲間5人と始めたグループは50周年を迎えた。特産品の開発に知恵を貸し、郷土料理のイベントで講師役も務める。「きょうだいより近い友達とにぎやかにやっとります」

 そんな児玉さんには孫が14人おり、今年2月には16人目のひ孫が生まれた。「盆にはみんな帰ってくる。いろいろ準備せんといかんねえ」。生涯現役。「ゆたーと」している暇はない。

 《自治体の役回りは、文字通り住民自治を体現すること。その道を走ってきた西米良村に今年5月、新たな推計が突きつけられた。2040年には538人に減る-。厳しい予想にも、ムラの人たちに立ち止まる様子は見られない》

 =おわり


=2014/07/19付 西日本新聞朝刊=

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