代理出産など容認 法案今秋提出へ 「親を知る権利」課題に 「当事者以外も考えて」

日本弁護士連合会が開いた生殖医療技術の法制化を考えるシンポジウムの様子 拡大

日本弁護士連合会が開いた生殖医療技術の法制化を考えるシンポジウムの様子

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 代理出産や第三者からの精子・卵子提供による出産を認める生殖医療補助法案を自民党のプロジェクトチーム(PT)がまとめた。通常国会は見送ったが、秋の臨時国会への法案提出を目指している。ただ、医学的危険を伴う代理出産には反対論も根強く、子どもが遺伝上の親を知る権利をどう考えるかなど課題も残る。

 「不妊治療の関係者だけでなく、すべての人に考えてほしい」。6月、東京都内で開かれた生殖医療技術の法制化を考えるシンポジウム。横浜市の医師で、第三者からの提供精子による人工授精(AID)で生まれた当事者の加藤英明さん(40)は、そう訴えた。

 加藤さんは医学生だった2002年、血液検査の実習で父親と血縁がないことに気づき、母親から事実を聞いた。「突然、人生のはしごを外された感じ。自分は一体何者なんだろう」。以後、その空白を埋めようと遺伝上の父親を捜し始めた。精子提供者は匿名のため手がかりは少なく、今も見つかっていない。

 シンポでは「生まれてくる子は治療に同意していないのに、一生背負っていく問題。提供者の情報管理やその後の告知ケアなど、少しでも納得できる対応が必要だ」と呼び掛けた。

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 AIDは、国内では戦後間もなく始まり、1万人以上が生まれたとされる。1990年代ごろからは、海外で卵子提供や代理出産を依頼する例も増えてきた。そこで厚生労働省の審議会は2003年、国に法整備を求める提言をまとめた。

 しかし、議論が具体化しないまま10年が経過。現在は、第三者からの精子提供を条件付きで認め、代理出産を禁じるとした日本産科婦人科学会の倫理指針があるのみだ。加藤さんは「需要がある以上、生殖医療技術が広がるのは止められない。それなら、きちんと法律の枠組みをつくった方がいい」と指摘する。

 同じくAIDで生まれ、当事者の会をつくった東京都の石塚幸子さん(35)も「60年たってようやく声を上げ始めた当事者に耳を傾けてほしい。このまま卵子提供、代理出産と進んでしまえば、私たちのように苦しむ子どもが増えてしまう」と危機感を募らせる。

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 PT案では、生まれつき子宮がなかったり、治療で摘出したりした場合に限って代理出産を容認。医学的に夫の精子と妻の卵子で妊娠できない夫婦は、第三者が提供した精子による人工授精や、提供卵子を使った体外受精などが認定医療機関でできるとした。

 一方、子どもが出自を知るための情報開示制度は「引き続き検討し、必要な措置を講じる」として結論は先送りになった。

 PT座長の古川俊治参議院議員は、出自を知る権利を認めることで精子や卵子の提供者が減る懸念や、誰がどう告知するか、親子関係が突然認知されて混乱が起きないか-などの課題を挙げる。その上で「近親婚を避ける、遺伝病で不利にならないという点で何らかの対処が必要だが、どこまで認めるかは慎重な議論が必要」との見解を示した。

 生殖医療に詳しい明治学院大の柘植あづみ教授は「これまでのシステムは、生まれてくる子や提供者のことはほとんど考えられてこなかった。さまざまな視点を踏まえ、法律を考えていくべきだ」と話している。


=2014/07/26付 西日本新聞朝刊=

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