【施設の子の夢支援 スピーチコンテスト】<下>諦めかけて…新たな道 ほか

 夢をかなえたいという意志が強く響いてくる。それは、傷ついて希望を失いかけた過去があったからこそなのかもしれない。6日に福岡市であった奨学金プログラム「カナエール福岡」のスピーチコンテスト。22日付の前編に続き、児童養護施設出身の学生たちが語った決意表明の様子を紹介する。

 ●諦めかけて…新たな道

 今春、里親の元を巣立った大学生のユリさん(18)=仮名=は父親の自死を打ち明けた。「私の中で何かが折れるのを感じた。父に認めてもらいたかったのに」。高校生のときだった。

 「もう頑張れないや」。歌手になるという夢は消えた。専門的に音楽を学びたくても、父を亡くして厳しくなった経済的な事情が許さなかった。「お金も時間もありません。それなら、どう生きるか…」

 考えぬいた。そして新しい夢が湧き上がってきた。自分が諦めた分、子どもたちを支えたい。思いが膨らみ、小学校の先生を目指すことにした。

 父を思いながら学生寮で暮らす日々。「私だからこそ伝えられることがあるはず。見ていてください」。着ていたTシャツには、仲間や親族の応援メッセージがしたためられていた。

 ●アナウンサー目指して

 高校を退学すると原則、児童養護施設を退所しなければならない。経済的な事情で幼いころに施設に入ったケイタさん(20)=仮名=は人間関係をこじらせ、通っていた高校を飛び出してしまう。施設の退所も余儀なくされ、大好きな野球も辞めた。

 夢はスポーツアナウンサー。しかし、心の奥にしまい込んでいた。「ずっと自分にうそをついていた。高校も続かない中途半端な人間が、夢を語っても相手にされるわけがないから」。退所後、一人で生きていかなければならないと思い悩み、不安に襲われた。

 15~19歳が共同生活を送る自立援助ホームに救われた。職員は自分の希望を聞いて食事を作り、勉強を教えてくれた。初めて知る家庭に近いぬくもりだった。そして初めて人に夢を打ち明けた。「スポーツアナウンサーになりたい」

 職員は受け止めて、大学進学も後押ししてくれた。「応援してくれる人がいると知り、夢に本気で挑戦しようと思いました」。今、定時制高校に通いながらアルバイトを掛け持ちし、夢への準備を進めている。

 ●支えてくれた人に感謝

 「あの時、高校に戻るのを諦めていたら、夢も諦めていたかもしれない」。短大に通うミサトさん(19)=仮名=は今、保育士という目標に突き進んでいる。

 高校生のころ、母親の再婚相手から虐待を受けた。恐怖のあまり声が出なくなったこともあり、保育士になる夢は遠のいた。

 虐待はエスカレートし、ついに重傷を負わされて緊急手術を受けることに。1日でも遅れていれば足を切断しなければならないほどだった。その後は児童相談所に保護され、ようやく小さな安心感を手にした。

 同時に今後の生活への不安がよぎった。高校中退も覚悟する。そんなとき、高校の先生に「みんな待ってるよ」と声を掛けられた。級友も温かく迎えてくれた。「支えてくれた人への感謝の気持ちでいっぱいです」。壇上から、精いっぱいの言葉を贈った。

 足には虐待の傷が今も残る。そして心にも。スピーチの文面を考えるとき、当時を思い出して気持ちが沈んだという。コンテストに臨む学生には、準備段階でボランティアが寄り添うことになっている。「話を聞いてもらったことで少し癒えた気がします」。どこにいても一人じゃない。安心感はまた大きくなった。

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 奨学金プログラム「カナエール福岡」に協力したい場合、さまざまな支援方法がある。

 寄付は(1)1口月2000円を継続する(2)2000円以上を単発で-の2通り。銀行振り込み、郵便振替、クレジットカード支払い(インターネット決済可)から選ぶ。

 このほか、古本や書き損じたはがきを事務局へ持参▽店舗などに募金箱を設置▽ボランティアとして参加-などの協力方法がある。

 詳しくはホームページ(http://www.canayellfukuoka.org/)を参照。検索サイトで「カナエール福岡」と入力しても閲覧できる。問い合わせは実行委員会事務局=092(791)4371。


=2014/07/29付 西日本新聞朝刊=

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