【耕運記】都市の緑化 「見た目」が基準「緑視率」

芝生が軌道を覆う鹿児島市の路面電車 拡大

芝生が軌道を覆う鹿児島市の路面電車

天神中央公園(手前)からアクロス福岡のステップガーデンを見上げる 森のように茂ったアクロス福岡のステップガーデン

 大通りの中央を貫く緑の帯は実に鮮やかに見える。鹿児島市の路面電車の軌道に敷かれた芝生は総計8・9キロ。見た目に優しくホッとする。観光客らの市に対するイメージも変えたのではないだろうか。そんな「見た目」の量を都市緑化の指標として取り入れる自治体が出てきている。

 視界に入る樹木、芝生などの比率を示す「緑視率」がそれだ。目に見える緑の量を数値化することによって事業の成果を感じてもらい、企業や住民も関わる地域全体の緑化の取り組みにつなげる狙いがある。

 緑化を測る指標は平面を覆った緑の面積の比率を示す「緑被率」が主流。公園や建物の屋上緑化など地図上で把握できる緑が基になる。壁を植物で覆う壁面緑化はほとんど含まれない。

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 大阪府は2012年度、緑視率を指標の一つに加えた。大規模な建物の建設に義務づけている一定面積の緑化について、緑視率を考慮して壁面緑化の面積も反映されることにした。

 導入の背景には、大都市圏は地価が高く、緑地を増やしづらいという事情や、緑化事業を進めているにもかかわらず府民の満足度が上がらないことがあった。「視野に入る緑を増やすことで緑化を実感してもらう」目的だったという。

 府は、主要道路沿いや高層ビルなど計64カ所を定点に指定。そこから一定の基準で風景を撮影し、写真内の緑の比率を算出する。毎年の変化を追うことで緑化の進み具合も把握できる。

 緑視率の出し方に正式な規定があるわけではない。府はコンパクトデジタルカメラを使った撮影法など独自のガイドラインを策定、インターネットのホームページで公開している。これによって「自治会、企業、学校などが自分たちの街の緑に関心を持ち、実際に緑化に取り組んでほしい」と期待する。

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 国土交通省の緑地環境室は、緑視率の取り扱いなど全国の自治体の実情を把握しようと本年度、初めて情報を集約している。

 九州では今のところ、緑視率導入の動きはほとんど目立たない。「定義が難しい」(北九州市)「一定の区域では出せるが全域で出すのは困難」(宮崎市)などが主な理由だ。

 アスファルトに覆われた都心では、熱が逃げにくいことから起きるヒートアイランド(熱の島)現象が深刻だ。緑にはこれを和らげる効果が期待される。

 福岡市の中心街にあるビル、アクロス福岡は階段状の斜面(ステップガーデン)を樹木が覆う。完成から間もなく20年を迎え、その数120種4万本。管理会社によると、緑化部分の表面温度の低下や、夜間に植栽の表面が放射冷却によって冷やされ、冷たい空気が斜面を下りる「冷気流」の現象も確認されるという。ヒートアイランド現象の緩和につながっているのを裏付ける。

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 ステップガーデンの「見た目効果」も侮れない。隣接する天神中央公園から連なるようにせり上がる森のような光景は都心にいることをしばし忘れさせる。ここにオフィスを構える会社社長(43)は「緑が多くて良い気分転換になる」と週に1回ほどは上るという。

 都市の緑環境を研究する大分大の小林祐司准教授(都市計画)は「緑被率が土地利用的な観点で見るのに対し、緑視率は景観を基準としている。人々がどう感じるかなど地域を立体的に捉えることにもなり、今後、都市緑化を考える上で重要な指標になる」と話す。

 緑を目にすることで得られる癒やし効果は誰もが感じることだろう。地元や地域の緑視率が分かれば、緑に対する住民の意識も変わってくるに違いない。


=2014/07/30付 西日本新聞朝刊=

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