【ムラで生き抜く 熊本・槻木の挑戦】<中>福岡で野菜が売れた

 生シイタケにワラビ、フキ、ゼンマイ…。7月19日、福岡市博多区の吉塚商店街の一角に、旬の山の幸がずらりと並んだ。

 「熊本県多良木町の槻木(つきぎ)から来ました。シカ肉の空揚げ、おいしかですよ」

 法被姿で威勢のいい声を上げるのは、槻木地区の集落支援員上治英人(うえじひでと)さん(42)。空き店舗を利用し、農産物や総菜を月1回、上治さんと住民2人が出張販売する「槻木アンテナショップ」だ。4月に始めて、この日で4回目を数えた。

 上治さんが前日にトラックで地区の農家などを回り、野菜や米など70品目以上を集めた。午前10時の開店と同時に買い物客でごった返し、近くの主婦(74)は「安くて新鮮。遠くから来ているので応援したい」とフキや乾燥シイタケなどを袋にびっしり買い込んだ。

 「限界集落の中で、もじもじしとっても誰も来(こ)ん。ここでPRしてみらんね」。200キロ以上離れた山里と都会がつながったのは、鮮魚店を営む商店街役員の石川ヨシ子さん(66)のひと言からだった。子どもが上治さんの友人で、家族ぐるみで交流していた。

 吉塚商店街は最盛期、150店舗ほどが連なっていたが、後継ぎ不足や大型商業施設の進出で現在は約50店舗に減少。活性化策として、初のアンテナショップを開店させた。商店街事務局長の小串(おぐし)武さん(73)は「回を重ねるごとに評判が高まっている。集客への貢献だけでなく、各商店主の刺激にもなっている」。

 上治さんは、店頭に「槻木小、児童募集」の看板も出して移住や観光をアピール。来年就学する息子と店を訪れた福岡市の男性会社員(38)は「一度、槻木に行ってみようかな」と興味津々だ。石川さんは「将来的には子ども同士の交流も」と、結びつきがさらに深まるのを期待する。

 「博多で自分たちの農産物は売れる」。上治さんに販売を依頼したのは4月は農家など10軒だったが、7月は2倍になった。住民には、自信が芽生えている。

 宮原勝子さん(73)は、シイタケを甘辛く煮た「しいたけ南蛮」やコンニャクの刺し身などを出し、店頭にも立つ。「皆、野菜を作る楽しみができて、『はまって作らんばね(精出して作ろう)』と元気になっとります」と、客と談笑しながら汗をぬぐった。

 野菜を出している黒木チハルさん(72)も「町外で野菜を売ったのは初めて。梅がたくさん実ってもほったらかしだった。使っていない畑で白菜などを多めに作りたい」と意欲満々だ。

 ショップ内には、槻木と県境を挟んで隣り合う宮崎県小林市須木地区の住民たちが出品するコーナーもある。須木小PTA会長有木将吾さん(42)が、4月にあった槻木小の再開校式に参加したのが縁で、間借りする形で「出店」した。

 7月末には須木の小学生18人が槻木にキャンプに訪れ、上治さんの長女で小学1年南凰(みお)さん(7)や住民との交流もあった。川辺で塩焼きしたヤマメは、槻木で養魚場を営む黒木正夫さん(83)が用意。「子ども1人の入学で学校が再開し、槻木がこんなににぎやかになった。張り合いの出ますなあ」と笑顔を見せた。

 槻木は、須木の5年か10年先の姿‐。そう見込んでいる有木さんは「活性化策に敬意を表し、須木の参考にしたい」と言う。


=2014/08/08付 西日本新聞朝刊=

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