【耕運記】酵素飲料 野菜や果物+発酵の力

こした液を遮光性のある瓶に入れて発酵させる。3カ月以上置けば飲める 拡大

こした液を遮光性のある瓶に入れて発酵させる。3カ月以上置けば飲める

自家製の酵素飲料作り。食材と砂糖を混ぜて3日目

 「酵素飲料」がはやっているらしい。野菜や果物を材料に自分で作る人も多く、テレビやインターネット販売も人気という。ネット検索サイトのグーグルで「酵素」を検索すると1510万件がヒット、関心の高さがうかがえる。健康増進やダイエット効果が期待されるというが、健康が気になる世代としてのぞいてみた。

 まずは酵素の復習。広辞苑によると、生体内で起きる化学反応に触媒として作用する高分子物質。物質代謝に関与し、特定の物質に特異的に作用する。

 酵素飲料がどんなものか味わおうと、自家製歴2年という福岡市の女性(49)宅を訪ねた。小さいグラスに出てきた液体は茶色の半透明、とろっとして甘く濃厚な風味がある。確かに栄養が濃縮された感じだ。女性はだいたい毎日、約60ミリリットルを炭酸水か牛乳で割って飲むという。

 3月ごろに春の野草など約50種類で作る「春酵素」、10月ごろにウコンなど根菜類中心の約50種類を使った「秋酵素」の2種類がある。作り方は次の通り。材料を3~4センチ角に切って漬け物用の容器などに同量の砂糖と混ぜる。10日間、1日1回素手で混ぜる(糖液との浸透圧の違いで食材の細胞から成分を抽出する期間)。その後、ざるでこし、さらにそれを細かい目の布でこす。遮光性のある一升瓶などに入れて、密閉せずにキッチンペーパーでふたをする。3カ月以上発酵させれば、飲めるようになる。

 女性ら“酵素ファン”によると、二日酔いしなくなったとか、足がポカポカしたなどの変化を感じたという。

    ◇   ◇

 なぜ体に良い作用をもたらすのか。酵素との関係も含めた仕組みについて「日本で最初の植物エキス発酵飲料」をうたう大高酵素(北海道小樽市)の学術情報室に聞いてみた。

 発酵の過程で、微生物の酵素反応によって生成された糖やアミノ酸などの成分が、効率よく体内に吸収される。その結果、新陳代謝がよくなり、疲労物質の排せつや皮膚の再生につながる。こうして健康になっていくことは、体内酵素への影響もあったと考えられる。ただし、これらは「結果から推測している見解」。強調したのは、酵素によって作ったから「酵素飲料」であり、酵素を集めた飲料ではないということだった。

 同社の商品は、発酵代謝産物や菌体など「未知の成分」を含むあらゆる成分のシナジー(相乗)効果が特徴なのだとか。このへんがそこはかとない魅力につながっているのだろう。

    ◇   ◇

 食品や酵素の専門家はどう見るのか。中村学園大学短期大学部の小田隆弘教授(生化学)は「ビタミンやミネラルなど体に必要なものを吸収しやすい形にしているという意味で間接的な効果はあると言えるのではないか」と説明。九州大農学研究院の松井利郎教授(食品分析学)も同様の見解。「発酵菌の一つである乳酸菌は善玉菌として整腸作用もある」と付け加えた。いずれも一定の健康効果は認めたが、体内酵素を補うという考え方は否定した。

 つまり「酵素飲料」とは、野菜や果物を発酵させて作った自然系の「栄養ドリンク」なのだろう。

 国民生活センターによると、酵素関連商品の価格や効能・効果に対する苦情などは4年連続で増えており、2013年度は377件。ダイエットなど「額面」通りの効果を期待してがっかりする人が増えているということかもしれない。

 隣席の女性記者に「酵素飲料って知ってる」と聞くと、今ごろ何言ってるのとけげんそうな顔をされた。ヨモギなどを材料に作っている自家製派だった。だが別に効果は期待していないという。じゃあ、なんで作ってんの? 「発酵ものが好きなんです」

 まあ、そんな理由で気軽に楽しめばいいということでしょう。


=2014/08/20付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ