【命を守る 虐待根絶へ】子どもの犠牲防ぐには 福岡のフォーラムから<下>孤立した若者 支える場を 地域の結びつき 発見に力

児童虐待をなくす地域づくりについて議論を交わすパネリスト=5日、福岡市 拡大

児童虐待をなくす地域づくりについて議論を交わすパネリスト=5日、福岡市

 弱みを出せず助けを求めにくい社会で、支えが必要な人にどう気づき、向き合えばいいのか。福岡市・天神で5日に開かれた、子ども虐待死の防止策を考える市民フォーラムでは、ひとり親家庭や若者を支援してきたNPO法人や教育関係者たちが、現状や課題を語った。23日付の前編に続き、パネルディスカッションの内容を紹介する。

 30年前に発足し、母子家庭支援を続けるNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・福岡」の大戸はるみ理事長は、非正規雇用やサービス残業が増える労働環境下で、仕事と子育て、家事を1人で抱えるシングルマザーの現状を紹介。夫のドメスティックバイオレンス(DV)や借金が原因で離婚する例も多く、養育費が支払われず、それでも困窮は「自分が離婚したせいだ」と孤立を深め、公的機関に相談できない人もいるという。シングルマザーが悩みをはき出せる「おしゃべり会」の活動も紹介し「なんとかやりくりしている母親たちを『自己責任だ』ではなく『がんばっているね』と思ってもらえる社会になるよう理解を広めたい」と話した。

     ☆

 困窮、孤立した若者のサポートの必要性を訴えたのは、一般社団法人「ストリート・プロジェクト」の坪井恵子理事長。居場所のない15~25歳の若者に無料で食事を提供する「ごちハウス」を福岡市内で運営している。同法人は、2009年に無料塾をスタートし、中卒や高校中退した若者の支援を続けてきた。

 家庭に心の休まる場がなかったり、精神的に不安定になった家族に傷つけられ家出したり。長く付き合ううちに「実は…」と被虐待経験を打ち明ける若者も。そんな若者にとって、ごちハウスは安全基地、スタッフは伴走者でありたいと坪井さんは語る。「本来いらない場所。でも今は、セーフティーネットからこぼれ落ちた多くの若者が必要としている」と涙で声を詰まらせながら報告した。

     ☆

 福岡市教育委員会のスクールソーシャルワーカー、森山麻衣子さんと城丸季佐教諭は、以前担当した小学校区で、家庭を支えるために地域ぐるみでネットワークをつくった経験を紹介した。

 1週間風呂に入っていない、学用品がそろわない、時間通りに家を送り出し
てもらえないなど、気になる児童が複数いた小学校で「見守りに行き詰まっていた」と城丸さん。その校区のスクールソーシャルワーカーになった森山さんの働きかけで、学校や児童相談所、地域の関係者と情報交換し、役割分担を決定。公民館で地域の人による「寺子屋」をしたり、主任児童委員に子どもの顔写真入り名簿を渡したりして、学校と子どもと地域の結びつきも強めたという。

 その結果、ネットワークの話し合いでは「ちょっと気になる子がいる」という話題が出るようになり、支援が必要な家庭を早期発見しやすくなった。森山さんは「親の養育能力に原因を押しつけがちだが、子どもの生活にどう関わるかを中心に動くことが重要。家庭のSOSをチームで受け止める体制を広めたい」。

     ☆

 パネリストの報告を聞いた、虐待事件に詳しいフリーライターの杉山春さんは「落ちこぼれたくない」と弱みを隠すために、SOSが発信しにくい社会になっているという。「人がつながることが今の時代には必要。家庭の中で子どもを育てきれないということは、将来市民に(しわ寄せが)返ってくる。それぞれの活動にもっと理解者が増えてほしい」と述べた。

 コーディネーターは、NPO法人ふくおか・こどもの虐待防止センターの松浦恭子事務局長が務めた。


=2014/08/30付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ