【ひとりで歩けるように 発達障害者の支えは】集団生活 夏休みに学ぼう ADHD 治療プログラム10年

学校生活を模した集団生活で社会のルールを学ぶ子どもたち 拡大

学校生活を模した集団生活で社会のルールを学ぶ子どもたち

 ●医療、教育、心理の専門家連携 指導きめ細かく 久留米 
 発達障害の一つである注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもたちのため、福岡県久留米市の医師らが毎年開いている短期集中治療プログラム「くるめサマー・トリートメント・プログラム(STP)」が今夏で10回目を迎えた。夏休みの2週間、学校生活を模した集団生活の中で社会のルールを学ぶ国内初の治療プログラム。10年間で延べ約260人の児童をサポートしてきたほか、職種を超えて支援者をつなぐ役割も果たしている。

 「今日は金メダル駄目だったけど、気を取り直して明日もっとポイント取ろうね」。8月下旬、1日の活動最後の反省会。臨床心理士に声を掛けられた小学4年の男児(10)が元気よくうなずいた。

 会場は、夏休みで休校中の特別支援学校。ADHDの小学生23人が二つのグループに分かれ、勉強したり、スポーツしたりしながら集団生活を送る。

 先生の言った通りにする、席を離れない、尋ねるときは手を挙げる-。活動は、「ルール」の紙を音読して覚えることから始まる。ADHDは、じっとしていられない「多動」や、結果を考えずに行動してしまう「衝動性」、苦手なことに集中できない「不注意」などの特性があり、学校生活の中に“暗黙”に存在するルールを守れず、叱られ続ける子どもが多いからだ。

 ルールを守り、積極的に発表するなど望ましい行動をすればプラス10点、騒ぐなど望ましくない行動をするとマイナス10点。行動は全てポイントで管理され、減点が続くと1人で座る罰を受けるが、高得点が続くと「金メダル賞」を授与。皆の前で褒められ、移動時にエレベーターが使えるなどの特権が与えられる。

 「そんなに序列化するのかと思われるかもしれませんが、現実世界はもっと厳しい。今行動を変えないと、本人は一生困ることになってしまう」。STP実行委員会の中心となって活動する久留米大医学部の山下裕史朗教授は強調する。

 くるめSTPの原型は、米国ニューヨーク州立大学が約30年前に始めた包括的治療プログラムだ。同大で研修を受けた山下教授が日本流に改良し、久留米市教育委員会や臨床心理士、医学生や看護学生などで実行委員会をつくって2005年に開始。09年にはNPO法人化し、医療、教育、心理の各分野か
ら毎年約50人が参加している。

 「各分野のプロが集まっているので、トラブルを起こし続けてしまう難しいケースでも、決して諦めることはない」と山下教授。減点が続いても臨床心理士らがきめ細かくフォローしてやる気を喚起し、プログラムの中で初めて成功体験を得る子どもが多いという。

 子どもたちの通う学校の教員にも見学してもらい、「学校生活上のルールを当たり前と思わず、視覚化して教える大切さが分かった」など教員の学びにつながることも少なくない。プログラムの中で他職種の支援者が顔を合わせることで、久留米市では日頃の連携も取りやすくなった。ただ、このプログラムが10年間で子どもたちにどんな影響を与えたか、これから分析を行う予定だ。

 市内外から毎年約100人の見学者が訪れ、島根県と岐阜県の2市でもくるめSTPを模した治療プログラムが始まったが、九州での開催はまだ久留米市のみにとどまる。山下教授は「今後はもっと多くの地域にSTPのノウハウを広げたい」と呼び掛ける。

 NPOくるめSTPのホームページでは、学校と家庭で取り入れる際のノウハウを解説。支援者向けの出張セミナーも行っている。同NPO事務局(久留米大病院小児科)=0942(31)7565。


=2014/09/06付 西日本新聞朝刊=

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