【傾聴記】認知症 小中学生も見守りを 声掛けや対応学ぶ 福岡でイベント

 徘徊(はいかい)者役の男性の手をしっかり握る男の子。徘徊者役の女性に声を掛けた後、緊張で泣きだしてしまった女の子…。夏休みの8月上旬、小中学生が「認知症」を学ぶイベントを取材した。認知症はどんな病気で、どう接したらいいのか‐。子どもたちに分かりやすく教える難しさと大切さを痛感させられた。

 イベントは、福岡県筑紫野市社会福祉協議会が主催。早い段階で正しい知識を持ち、支え合える地域の一員になってもらうのが狙いだ。自ら希望した市内の小学4年~中学2年の10人が参加した。

 子どもたちは講演や寸劇などで基礎知識を学んだ後、徘徊で行方不明になった高齢者を捜す「人捜し訓練」に挑戦した。4~5人でチームを組み、渡された名前や服装、特徴などの情報を基に、決められた範囲内を歩き回る徘徊者役を30分間で捜し当てる。

 見つけたら(1)正面から話し掛ける(2)急がせない(3)相手の気持ちを傷つけない‐など、この日学んだ知識を総動員して対応する。

 しかし、子どもたちには見知らぬ人への声掛けそのものが難しい。やっと「こんにちは。何をしているんですか?」と言葉が出てきても、徘徊者役のちぐはぐな応答に戸惑ってしまう。

 そんな中、小学6年斉藤鳳(つばさ)君(11)は自然と徘徊者役の男性の手を握った。会話こそできないものの、ゴールまで優しく手をつないで連れ帰った。

 聞けば、県外在住の親類に認知症の疑いがあるという。「認知症を理解している人が少ないので、詳しく知りたかった。今度から近所のお年寄りにも声を掛けたい」と笑顔を見せた。

 ほかの参加者も「友達と一緒なら声を掛けられそう」「認知症って怖かったけど、怖くなくなった」などと話してくれた。

 警察庁のまとめによれば、認知症による徘徊などで行方不明になる人は年間約1万人に上り、そのうち数百人が死亡している。認知症の人を地域で見守る仕組み作りは急務だ。

 こうした中、子どもたちに認知症を知ってもらう試みは広がっている。市を挙げて「安心して徘徊できるまち」を目指す福岡県大牟田市は2004年度から、市内の小中学校で認知症への理解を深める絵本教室を開く。昨年度は全21小学校のうち10校、全11中学校のうち7校で開かれた。

 福岡市では09年から、小学生対象の「認知症キッズサポーター」養成がスタート。13年度末現在、キッズサポーター869人が誕生している。担当者は「子どもを通して親世代の関心も高められる」と期待する。

 筑紫野市のイベントで徘徊者役を務めた市介護を考える家族の会代表の山下信行さん(78)は「徘徊と間違えて声を掛けても笑い合えるまちづくりをしてほしい。そうすれば、子どもたちも気になる高齢者に自然に声を掛け、見守ってくれる」。若年性認知症の夫を介護する江島文子さん(67)は「認知症の人は記憶をなくしても感情だけは残る。認知症の人に会ったら、にこっと笑って目を見てあいさつしてください」と呼び掛けた。

 実践できている大人がどれだけいるだろうか。子どもに分かりやすく教えるためにも、親を含めた周囲の大人がより深く理解したい。


=2014/09/11付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ