わが町の「地域包括ケア」は 福岡・大刀洗町 住民が議論 施策に反映

福岡県大刀洗町の住民自らが地域で高齢者を支える仕組みづくりを議論した「住民協議会」 拡大

福岡県大刀洗町の住民自らが地域で高齢者を支える仕組みづくりを議論した「住民協議会」

 わが町にふさわしい「地域包括ケア」って何だろう-。福岡県大刀洗町で住民自らが、介護が必要な高齢者を住み慣れた地域で支える方策を議論し、町の施策に反映させるという全国でも珍しい取り組みが進んでいる。無作為に選ばれた住民46人でつくる「住民協議会」。7月から3カ月間に及んだ住民たちの議論を追った。

 「地域で認知症の勉強会をやったら?」「高齢者と子どもの関わりを増やしては」…。9月中旬の土曜日の午後。大刀洗町役場に住民たちが集まり「地域包括ケアシステム」について熱心な議論を繰り広げた。

 協議会委員は18~69歳(平均45歳)の46人。町が無作為抽出した千人に呼び掛けて集まった有志で、この日は委員のうち32人が集まった。多くの人が参加しやすいように、協議会の開催は週末。7月から激論を交わし、この日は議論をまとめる最終日だった。

 町では2月、事業仕分けなどで知られる政策シンクタンク「構想日本」(東京)に委託して住民協議会をスタート。第1弾はごみについて議論し、7月に町長に答申した。

 第2弾のテーマは、町独自の高齢者介護を考える「地域包括ケアシステム」に設定。6月に成立した地域医療・介護総合確保推進法に基づき、要介護度が比較的低い「要支援」の人向けサービスの一部が2017年4月までに、介護保険による全国一律サービスから市町村事業に移行される。介護の自治体間格差も指摘される中、多くの自治体が事業内容や担い手確保で頭を悩ませている問題だ。

 大刀洗町は福岡県南西部にあり、人口は約1万5千人。高齢化率は24%(4月1日現在)と県平均並みだが、高齢化は進み、高齢者のみ世帯や高齢者独居世帯も増えている。

 協議会ではまず町健康福祉課が介護保険制度、町などが実施する介護予防事業について解説。委員は三つの分科会に分かれて議論を重ねた。

 「体が不自由な祖母は周囲に迷惑を掛けるからと引きこもりがち。家から近い場所で気軽に集まれる場があれば」「高齢者と障害者のケアを一緒に提供しては」など、多様な問題提起や意見が相次いだ。一方、「議論の幅が広すぎて焦点が絞れない」「介護していないので実感がわかない」など率直な意見もあった。

 委員の中には町の事業を見学したり、介護中の親族の話を聞いたりする人も出てきた。この結果、高齢者の生きがいづくりが不十分▽世代を超えたコミュニケーションの場や機会がない▽当事者意識が欠如▽町と町民の意識のギャップがある▽高齢者の実態把握ができていない-などの課題が浮かび上がった。

 これに対し、委員から「地元行事には積極的に参加する」「農業地域の特性を生かした高齢者の活動の場を創出」「行政だけに頼らず、自分たちの事は自分たちでする」などの改善案が集まった。委員の農業畠山将幸さん(28)は「高齢者の問題は身近じゃなかったが、議論の中でおもしろい提案もあり、協力していきたい」と語った。

 改善案を盛り込んだ答申は11月末に町長に提出。答申を踏まえ、事業計画を練る健康福祉課は「住民は想像以上に介護に関心がなく、制度を知らないと思い知らされた。今後のニーズ調査などで丁寧な説明を心掛けたい」としている。

 議論をリードした構想日本の政策スタッフ田中俊さん(28)は「難しいテーマだが、住民が介護を考え、課題をあぶり出す契機になった。行政だけでは解決できない問題でもあり、住民の関心を高め、今後の事業を担う人材の掘り起こしにもつながった」と評価した。


=2014/10/09付 西日本新聞朝刊=

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