【耕運記】九大で弁当の日 「食」や「命」考える一歩

九州大であった学生と大人の弁当の日。自作の料理を持ち寄って楽しんだ 拡大

九州大であった学生と大人の弁当の日。自作の料理を持ち寄って楽しんだ

 施設の建設が続く九州大の伊都キャンパス(福岡市西区元岡)。青空の下、図書館前の芝生広場に弁当の輪ができた。選択科目「自炊塾」の受講生と、市の中心街・天神で毎週水曜にある「大人の弁当の日」のメンバーが集まった。

 食べ物への感謝や自立心を育むとして全国の学校に広がる「弁当の日」。学生と社会人の合同開催となったこの日は「秋」をテーマに各人が作ったおかずを1品ずつ持ち寄った。

 経済学部1年の女子学生(20)は自炊歴半年。価格の安い鶏肉を専ら買うようになったが、この日は「胸肉より柔らかいもも肉を奮発」。ホクホク感を出そうとサツマイモを入れた「鶏肉の煮物」を持ってきた。

 「サケの秋ホイル」を持参したのは情報工学系の女子大学院生(24)。サツマイモとキノコ類を付け合わせ、台所にいっぱい並んだ「変な調味料」から選んだカナダのハーブを利かせ、ホイル焼きにした。

 自炊塾は食を通じて健康、経済、環境などについて考える力を養成してもらうのが狙い。レストランのシェフら外部講師による講義、調理や農業実習などに取り組む。指導する比良松道一准教授(農学)は「この授業は継続が重要」と語り、できるだけ多くの回数の自炊を求める。7月までの前期を受講した25人の中には、夏休み後も自炊を続けたり関連イベントに参加したりするなど関心を持ち続ける学生もいて、成果を実感するという。

 多くの学生は入学するまで「台所に立たないで」と母親などから言われていたそうだ。塾を通して、食べ物を分かち合う「共食」の喜びや、親への感謝など心の成長も見られるという。

 「弁当の日」はそんな気づきの入り口だ。シンプルな挑戦の中に「食」の意味を考え、その先で「命」と向き合う奥の深い仕掛けにもなる。

 ちなみに記者自身のメニューはシメジやエノキ、野菜の炒め物。シンプルすぎて工夫が足りないと反省している。

 後期の講義は始まったばかり。「買い物に行くと以前より何を選ぶか真剣に考えるようになった」と1年の女子学生は早くも自身の変化を感じ取る。「調理だけでなく食についての知識も深めたい」と期待した。半年後の「弁当の日」が楽しみだ。


=2014/10/15付 西日本新聞朝刊=

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