【食用油の選び方】<上>脂肪酸の種類で異なる役割 バランス良く摂取を

 「油で健康になる!」「脳と体に効く」「ボケない 老けない 太らない」‐。こんなキャッチーな言葉が表紙を飾る雑誌が書店に並び、デパ地下では多種多様な銘柄が売られる食用油。健康や美容の効果をうたう情報があふれる中、上手に付き合うにはどうすればいいのだろうか。

 「ごま油を主役に料理を作るバラエティー番組が最初だったのでは」。最近の油ブームのきっかけを福岡県筑紫野市の「筑前たなか油屋」の田中信行社長はこう見る。インターネットを含む通販で8種類の油を取り扱う同社。メディアに多彩な油が登場し「オメガ3という成分が体に良い」など健康との関連が紹介されると、全国から注文や問い合わせが増えたという。

 ただ「あふれる情報に消費者が惑わされている」とも感じる。買っても使わないままなのか、リピート率は低い。成分だけがクローズアップされ、健康・美容に関心の高い消費者が踊らされているように思う。

    ◇    ◇

 油=脂質は体にとってどんな役割があるのか。タンパク質、炭水化物とともに三大栄養素の脂質はエネルギー源であり、体を構成する細胞の膜の成分となる。半分以上が水分の体を守っているのが脂質と言える。中でも脳は脂質が約60%を占める。体内の情報伝達にも関わっている。

 健康面で注目されるようになったのは、脂質の主成分・脂肪酸の種類の違いによって体に対する影響が異なることが知られるようになったからだ。

 脂肪酸は二つに分類される。常温で固体の油脂(肉類、バターなど)に含まれる飽和脂肪酸と、液体の油脂(植物油や魚油など)に含まれる不飽和脂肪酸だ。不飽和脂肪酸はさらに、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸など)と多価不飽和脂肪酸(リノール酸、〓(〓はアルファ)‐リノレン酸など)に分けられる。

 ブームの火付け役とも言えるオメガ3系は多価不飽和脂肪酸に含まれ、〓(〓はアルファ)‐リノレン酸は体内でわずかながらDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変わる。サバやイワシなど青魚に豊富に含まれ、脳や心臓の血管を健全に保つ効果で知られる脂肪酸だ。

 ただ「どの脂肪酸が良いとか悪いとか言えない」。脂質代謝が専門の佐藤匡央(まさお)・九州大准教授(栄養化学)は強調する。

 脂肪酸にはそれぞれ役割、特徴がある。例えばオメガ3系はアレルギー症状の悪化を抑える効果もあるが、増えすぎると感染症のリスクが高まる恐れがあるという。

 注意すべきなのはバランス。佐藤准教授によると、理想の割合は「飽和」「一価不飽和」「多価不飽和」の割合が3対4対3。さらに多価不飽和脂肪酸のうちオメガ6系、3系が4対1になるのが理想という。

 実は、現代の日本人の食事はこれに近いという。ただ洋風化した食生活では、オメガ3系が不足しがち。研究報告によると、若い世代はオメガ3系に対するオメガ6系の比率が5に近づいている。ちなみに米国人は15という。

 油と付き合うには、理想の摂取バランスに向けて何を補い、どう取るかという視点が欠かせない。

 それを考える際、重要なポイントがある。「見えない油」と「見える油」だ。


=2014/10/29付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ