九州森林フォーラム 木質バイオマス 発電より熱利用を 専門家が提言 利用効率に大差

木質バイオマスのあり方を論議した九州森林フォーラム 拡大

木質バイオマスのあり方を論議した九州森林フォーラム

 木材を自然エネルギー源としてとらえる木質バイオマス。再生可能エネルギー電力の拡大を目指す固定価格買い取り制度(FIT)が2012年に始まり、木質バイオマス発電の計画も相次ぐ。福岡市で10月にあった九州森林フォーラム(NPO法人九州森林ネットワーク主催)では、発電優先ともいえる現状に専門家や林業関係者が疑問を呈し、ボイラーやストーブの燃料とする熱利用を主軸にした仕組みへの転換を求める声が大勢を占めた。林産業の復興やエネルギー利用効率を考慮した論議から、木質バイオマスの特徴や課題も浮かび上がった。

 発電に偏重した状況を危ぶむ第1の理由は、新設される多くの発電所を稼働させる大量の木材を、継続的に調達できるのかという点。

 木質バイオマス発電は、ほとんどが未利用の林地残材などを燃料に想定。採算ベースとされる5千キロワットの発電所で年間約10万立方メートルの木材消費を見込む。

 福島第1原発の事故後、電力不足の懸念から国はFITを導入。太陽光発電のほか、木質バイオマス発電計画も全国で60カ所を超え、九州でも19カ所を数える。県内で少なくとも4カ所が来春にも稼働する宮崎県諸塚村の林業、梅田義輝さんは「急な需要増に山側が対応するのは厳しい。一般の市場に出荷される通常の分もあり、木材資源の奪い合いの様相だ」と混乱する現場の不安を語った。

 利用効率の悪さも挙がった。NPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊みゆき理事長は「発電は利用効率(投入分と出力分のエネルギー比)が20%台と低く、これは貴重な木材資源の7割超を捨ててしまうということ」と説明。電力のほぼ半分が空調や給湯などの熱に使われている実態を示し、「熱利用なら60~93%の効率。資源の有効活用、持続可能性からも熱利用を優先すべきだ」と話した。

 木質バイオマスの先進地、ドイツなど欧州の事情に詳しい富士通総研経済研究所の上席主任研究員、梶山恵司氏は、導入に向けた課題を「残材をどうやって使うかに尽きる」と強調した。建築材としての利用が大前提とした上で、国内の林地の未利用材や加工残材は計2500万~3千万立方メートルに上り、石油に換算して55億~66億リットル、小売価格で5千億~6千億円に相当すると説明。これを生かすため林道の整備や、熱利用を優先する仕組みに業界を誘導する制度づくりを訴えた。

 新たな地域経済を生み出す側面を紹介したのは、熊本県阿蘇市のNPO法人九州バイオマスフォーラムの中坊真事務局長。まきを生産しており「仮に阿蘇でまきストーブが5%普及すれば1500万円の市場が生まれる。その分、灯油代として海外に流れていたお金が地域に循環する」と指摘。「熱利用は地産地消の典型」と表現した。

 こうした利点や欧州の先進例があるにもかかわらず、なぜ発電偏重の形になったのだろうか。「背景に日本にはエネルギー=電力という思い込みがある」というのが関係者の見方だ。コーディネーターを務めた九州大の佐藤宣子教授(森林政策)は「木質燃料は重要な熱源となるエネルギー。そうした意識を育てるため、市民も関心を持ってほしい」と話している。

 ●病院やハウス栽培… 国が補助制度

 バイオマス(生物資源)は家畜のし尿、生ごみなども含まれ、肥料や飼料への利用もある。林地残材や製材工場の残材を活用する木質バイオマスもその一つ。

 バイオマスは地球温暖化を招く二酸化炭素(CO2)を燃焼によって出すが、植物が光合成によって発生量を大気から吸収する。その分を差し引いてゼロと計算するのが「カーボンニュートラル」の考え方。国はこれに基づき2002年、「バイオマス・ニッポン総合戦略」を策定。多様なエネルギーや製品として利活用することを目標としている。本年度は農林水産省、経済産業省、環境省が温浴・介護施設や病院、ハウス栽培用の木質バイオマスボイラーの導入などを想定した各種の補助制度を用意している。


=2014/11/19付 西日本新聞朝刊=

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