G8認知症サミット 後継会議 熊本・地域に拠点病院 大牟田・徘徊見守る街 九州の先進例 報告

東京都内で開かれた認知症の国際会議 拡大

東京都内で開かれた認知症の国際会議

 認知症対策について議論する国際会議が5~6日、東京都内で開かれ、主要国の政府関係者や研究者ら約300人が参加した。会議では、各国から最新の取り組みが報告される中、日本からは認知症の高齢者を地域ぐるみで見守るなど九州の先進事例が報告され、注目を集めた。また、認知症当事者も登壇し、本人が望む施策の必要性を訴えた。

 高齢化に伴う認知症の人の増加は、世界共通の課題だ。国際アルツハイマー病協会の推計によると、現在、世界で認知症の人は推定4400万人だが、2050年には約3倍の1億3500万人になると予測されるという。今回の会議は、昨年12月に英ロンドンで開かれた「主要国(G8)認知症サミット」の後継企画。今回のテーマは「新たなケアと予防のモデル」で、各国の担当者が独自の取り組みを報告した。

 英国は、健康診断の数値や飲酒、喫煙の有無などから脳の年齢を推測し、認知症になる可能性が分かるシステムを研究。カナダは、女性の認知症が男性の2倍に上ることに着目しているという。フランスは早くから国家レベルの取り組みを進め、認知症の段階に応じた支援を提供。イタリアでは、州の独自色が強いため、地域事情に応じた施策を進めているという。

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 熊本大大学院の池田学教授は、09年から取り組む「熊本モデル」を紹介した。熊本県では、県全体を統括する基幹型病院と9の地域拠点型病院を指定し、通院30分以内での専門的な医療を提供。かかりつけ医や介護施設職員など幅広い職種が参加し、対策を話し合う検討会を年30~40回開催するという。池田教授は「地域資源を最大限に利用して対費用効果を考えたシステム」と力を込めた。

 福岡県大牟田市の市認知症ライフサポート研究会代表の大谷るみ子さんは、認知症の高齢者が行方不明になった事態を想定し市全域で取り組む「徘徊(はいかい)模擬訓練」について説明。見守りの目が広がり、実際に高齢者の保護につながっていることを挙げ「一歩ずつ、安心して徘徊できる町へつながっている」と話した。

 また、子どもたちへ認知症への理解を深めるための「絵本教室」も紹介。米ケースウエスタンリザーブ大のピーター・ホワイトハウス教授もこの取り組みに言及し、「世代を超えた交流が認知症に優しい、高齢者に優しい社会をつくる」と指摘した。

 九州大の二宮利治教授は、1985年から福岡県久山町で取り組む住民追跡調査の結果を報告。糖尿病や高血圧、喫煙が認知症の発症リスクを高め、豆腐や魚、野菜、牛乳を中心とした食事と運動がリスクを減らす可能性があると指摘した。この調査をモデルに、厚生労働省は2016年度から全国で1万人を対象にした追跡調査を行う計画だ。

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 これまでの支援は、認知症の人をどう介護するかなど支える側の視点に立った支援が中心だった。そんな中、会議では認知症と診断された人たちが自身の体験や望む支援を訴えた。

 10月に発足した国内初の当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」共同代表の藤田和子さん(53)=鳥取市=は「認知症になったら何も分からない、できないという偏見は、本人や家族の生きる気力を奪い、孤立させる」と声を上げた。介護が必要になる以前の初期段階の支援がないことを指摘し「この『空白の期間』に絶望してしまう人が多くいる」と、早期支援の必要性を強調した。

 政府も当事者の視点を、年内をめどに策定する認知症対策の新たな国家戦略に反映させる考えだ。


=2014/11/20付 西日本新聞朝刊=

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