【自由帳】衆院選と教育改革 問われる有権者の眼力

教育改革の行方選択にもつながる今回の衆院選。教室はどう変わっていくのか(一部加工しています) 拡大

教育改革の行方選択にもつながる今回の衆院選。教室はどう変わっていくのか(一部加工しています)

 その小学校には1年生が3クラスあった。仮にABC組としよう。A組の授業を取材していたのだが、時折、廊下を歩きながらB、C組の授業風景も外から見ていた。

 取材が終わり、教頭と雑談した。「B組が静かで、落ち着いてますよね」。そんな感想を話すと、教頭はけげんな顔をした。

 「えーっ、私たちはB組を一番心配しているのに。あの静けさは児童の戸惑いの表れ。先生の指示や意図が十分に伝わらず、ぽかんとしている。1年生は少々ガヤガヤしているくらいの元気さがあっていい」

 なるほどと思った。

 私たちは「静かな教室」を「秩序の保たれた教室」と捉えがちだが、別の視点から見ると評価も変わる。「平均成績の高い学校」が、実は「学力格差の大きい学校」かもしれない。

 教育委員会が推奨する「モデル授業」が、必ずしもそうではなく、本当に指導力があり、子どもたちに大切なことを伝え、実践している先生は目立たなかったりする。

 B組には何か事情があり、その現実が教頭に見えていない可能性だってある。本当のことはなかなか見えにくいものだ。

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 安倍政権の2年間を評価する衆院選が2日、公示を迎えた。経済政策「アベノミクス」の是非が争点としてクローズアップされている。その一方、これだけ多くの教育改革路線を矢継ぎ早に打ち出した政権もかつてない。

 すでに路線が決まったものだけでも、全国学力テストの学校別成績を教育委員会判断で公表(本年度から)▽首長権限強化などを柱にした教育委員会制度改革(来年4月施行)▽小中学校の「道徳」を教科化(2018年度にも)

 大学入試センター試験の廃止・達成度テストの導入▽6・3・3・4の学制見直し▽小学校英語(5、6年生の外国語活動)の教科化▽小学1年生の35人学級見直し(40人学級復活)-などの動きも見られる。

 改革を主導しているのは首相直属の「教育再生実行会議」や、文部科学相の諮問機関「中央教育審議会」(中教審)。教育改革の必要性は認めるが、こんなに一斉に打ち出されても…。むしろ、変わるべきは「第2の議会」とも呼ばれる審議会制度のあり方ではないかと思ってしまう。

 それぞれの改革の行方、実施時期は定まっていないが、この流れが続けば、2010年代後半には「戦後教育の大転換」が訪れることは間違いない。

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 佐賀大学(佐賀市)で11月にあった日本自治学会の研究会では「教育と自治」もテーマとなった。教委改革の評価と課題などを中心に論議された。

 「地域の教育への試みを制約しているものは何か。基礎自治体(市区町村)に、もっと権限移譲すべきではないか」(新藤宗幸・同学会会長)

 「教委改革を前向きに捉えたい。本当のレイマンコントロール(住民統制)とは何か、考える一歩にしたい」(福岡市教育委員長でもある八尾坂修・九大大学院教授)

 国は教育にどこまで関与すべきか、教委が本来やるべき仕事は何か、NPOや地域の特色や人材(教育力)を生かす別の仕組みがあるのではないか。国からのトップダウン、一律型の教育改革ではなく、地域主導の手づくり、分権型改革を求める意見が目立った。

 教育改革を求める声は根強い。改革にはスピードも求められよう。だが、その方向は今のままで良いのか。その手法や優先順位を含めて、「答え」は一つではない。そんな視点からも、候補者や政党を見極める有権者の眼力が問われている。 


=2014/12/02付 西日本新聞朝刊=

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