【耕運記】交通機関の適温は 体感に個人差 対応苦慮

 冬本番の寒さを迎え、厚手のコートやジャンパーを着込む機会が増えた。寒さ対策に力を入れるほどに、げんなりするのが暑すぎる車内や店内だ。世の中、ウオームビズだというのに、どうにかならないのだろうか?

 出勤のため乗り込んだバスだった。ヒーターをガンガンきかせた車内に「またか」とうんざりした。つり革につかまりながら、汗ばんでくるのが分かる。気分が悪くなってきたが、ほぼ満員の車内。荷物もあってコートは脱げない。運転席までは遠く、「暑いんですけど」と叫ぶ勇気もなかった。なぜ、こんなことになるのか。

 「車内の設定温度が特にあるわけでなく、乗務員の判断で対応している」。バス車内の温度管理について、西日本鉄道(福岡市)のバス部門、自動車事業本部の担当者が説明してくれた。雨の日など条件によって車内の状況は大きく変わってくる。乗務員は乗客の声を聞きながら判断せざるを得ないという。

 ただ大型バスはエンジンをかけるだけでは車内が暖まらない構造になっていて、走りだして暖まるまでしばらく掛かる。このため朝は寒くなりがち。「それを防ぎたい意思が乗務員に強く働き、車内の温度が高くなりがちなのかもしれない」(担当者)と推測した。

 一方、電車は22度に設定している。鉄道事業本部によると、東日本大震災があった2011年、節電のためそれまでより2度下げた。「早朝は寒いとの声、夕方のラッシュ時間帯には暑いという苦情が多く、対応に苦慮している」と担当者。個人差もあり、誰もが快適な車内は難しいという。

 福岡市地下鉄は意外に低い19度。職員が実際に添乗するなどして調査、適切な温度として決めた数字だ。大半の車両の温度は自動管理され、23度になると天井の扇風機が回り、25度を超えると冷房も入るそうだ。

 交通機関の車内は、ほとんどの乗客が寒さに備えたスタイルだ。低めに設定して、寒いという声があれば暖める方式を基本にしてはどうだろう。

 利用する側の防衛策について、日本衣服学会長の今村律子和歌山大教授は「暑くても脱げないときはコートの首の部分を開けて熱を逃がすだけでも違う。マフラーなど着脱しやすい小物を活用するのも方法」と言う。寒さ対策として抑えるべき基本として「胴体部分を十分に暖かくすること。それで手足も温まる」と補足してくれた。

    ◇   ◇

 一方の百貨店。ここも暖め過ぎのイメージがあるが、実は「人混みと照明のため温度が上がりやすく、ほとんど暖房は入れていない」(岩田屋三越の総合企画部)。25度という設定温度はあるものの、暖房どころか外気を入れて温度が上がり過ぎないようにしているという。暑さ寒さの苦情もあるが、対応が難しいのは交通機関と同様で「着込んだ客を想定した低めの温度を心がけている」(博多大丸)ようだ。

 地球温暖化対策で2005年に始まったウオームビズ。環境省は室内温度20度を推奨する。取り組みの一つにウオームシェアがある。自宅の暖房を止めて外出し、みんなが集まる場所で過ごして省エネにつなげようという試みだ。

 百貨店はそうした施設の一つだ。このほか公共施設、飲食店、温泉など各地のシェア施設を紹介するマップがインターネット上に公開されている。百貨店の案内にはこうある。「随所に設けられた休憩場をご自由にお使いいただけます」

 冬の節電は夏よりも省エネ、二酸化炭素(CO2)排出削減の効果が高いという。シェアの例には、ご近所で集まって過ごすホームパーティーもある。コミュニケーションが深まるという別の効果も期待する。バス車内の暑さは避けたいが、そんなふうに肩寄せ合う空間で、身も心も温まりたい。


=2014/12/10付 西日本新聞朝刊=

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