【こんにちは!あかちゃん 第25部】少子化 わたしの意見<2>経営者の意識改革を 元東レ経営研究所社長 佐々木 常夫さん

 ‐会社員、経営者としてワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実践してきました。

 「私も月200時間近く残業した時期もあった。妻が入退院を繰り返す中、自閉症の長男をはじめ3人の子育てと家事のため、定時に帰る必要が出てきたのです。でも、事情があるから仕事はほどほどに、では駄目。残業するのと同じかそれ以上の結果を出す。社員と会社が共に成長するのがワークライフバランスです」

 「課長時代は朝5時半に起きて子どもの朝食と弁当を作って出勤し、午後6時には会社を出ていた。駅に迎えに来た子どもたちと手をつないで、今日あったことを話しながら帰る。一緒に夕食の支度をしたり、風呂に入ったり。長時間労働をしていて、こんなに楽しいことを知らない父親も多いのです」

 ‐長時間労働を見直すと、子育てもしやすいのですね。

 「働きやすい職場でないと2人目、3人目の子をつくろうと思わないだろう。そういう意味では、長時間労働も少子化の一因といえるかもしれない。女性が『子どもも仕事も』と思うのは当然の欲求。会議は昼間にするなど、少しの配慮があればどうってことない。また、私は東京と大阪を6回転勤したが、娘が転入できる高校がなかなか見つからなかった。単身赴任が前提のシステムになっているんです」

 「人間には仕事以外にも大事なことがたくさんある。家族と付き合う、自分の健康や趣味、コミュニティー。仕事を定時で終えないと、自分の生活は大切にできません。私の次男と長女は今年結婚しました。家族が増えて、楽しくてたまらない。そんな機会が減る少子化って、寂しい社会じゃないでしょうか」

 ‐日本は長時間労働が常態化しています。

 「朝から晩まで猛烈に働いたら体が持たない。だらだら働くから長時間労働になる。それに慣れ親しんだ人が上にいるから変わらない。製造現場の生産性は先進国の中でも最上位だが、ホワイトカラーは最下位グループ。効率化を進めないのは経営の怠慢であり、トップの意識改革が必要です」

 「残業代が生活給の一部になっているという問題もある。基本給を上げて残業をなくしても経済性は変わらない。経営者が望むのは、結果。長時間まじめに働くより、短時間で結果を出す人材がいいはずです」

 ‐佐々木さんは仕事をどう効率化したのですか。

 「一番必要なのは仕事の計画を立てること。管理職は部下が何にどれだけ時間をかけているか知らず、部下も計画なく仕事をしている。どうすれば最短でできるか、考える癖を付ける。計画の修正や、実績と対比させる議論を繰り返していくのが大切。良い習慣は才能を超えます。私はたいてい、着任後2カ月で残業をなくした。私が去った職場は元に戻っていたようだが。トップが継続的に取り組まないといけません」

 ‐ワークライフバランスは日本に根付きそうですか。

 「安倍政権も推進を掲げており、経済界も、特に大手企業が真剣に取り組み始めた。女性の管理職比率も上げようと努力している。遅れると社員に見放されて、いい人材が集まらなくなるから必死だ。できる企業から始めれば、社会全体も変わっていくでしょう」

 ▼ささき・つねお 秋田市出身、70歳。東レ社員を経て2003年に東レ経営研究所社長、10~14年に同特別顧問。ワークライフバランスやタイムマネジメントの講演、著書多数。

 ●メモ=ワークライフバランス(WLB)

 地域のつながりの再生や女性の活躍推進を目指し、政府は2007年に「ワーク・ライフ・バランス憲章」と行動指針を策定した。WLBを阻んでいる要因の一つが長時間労働。経済協力開発機構(OECD)によると、日本人の1日当たりの労働時間は9時間で、平均の8時間4分を大幅に上回る(11年調査)。労働生産性は加盟34カ国のうち21位で、主要先進7カ国中では19年連続で最下位だった(12年調査)。仕事に追われる男性の育児休業取得率は3%に満たず、子育てと両立できずに退職する女性も少なくない。


=2014/12/17付 西日本新聞朝刊=

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