【こんにちは!あかちゃん 第25部】少子化 わたしの意見<3>どの選択でも正しい 甘糟りり子さん

 ●「産む、産まない、産めない」 著者 甘糟りり子さん 
 -7月に刊行した短編集「産む、産まない、産めない」(講談社)は、思いがけない妊娠や死産、羊水検査など、「産む」にまつわるさまざまな状況に向き合う人々を描いています。どんな思いを込めたのですか。

 「大きな任務を任される年齢になり、仕事か出産かの選択を迫られる友人を何人も見たのが書くきっかけでした。ここ数年で変わってきたと思うが、会社で一定のポジションに就くと、『妊娠しました』とは言いづらい雰囲気があった。仕事優先で産む機会がなかったと後悔しているような年上の友人もいた。女の人は『産む、産まない、産めない』のどれかに収まらざるを得ない。でもどれを選択しても間違いではない。人の分だけ正解があるということを伝えたいと思いました」

 -読者からどんな反応がありましたか。

 「予想以上に『重美』に共感する声が多かったです」

 -老舗呉服店を継いだ夫との間に「後継ぎ」ができず、不妊治療で悩む女性ですね。

 「後継ぎに限らず、孫を望む周囲からのプレッシャーがあるという読者が多かった。私の友人は初婚の男性と子連れ再婚し、相手の両親から『自分たちの孫が見たい』と言われたそうです。女性が出産でこんなに苦しんでいるとは知らなかった、という男性の声もありました」

 -ご自身はプレッシャーを感じたことはありますか。

 「結婚も出産も経験していないので、将来1人で大丈夫かとは言われる。一番うるさいのは出産した女友達。私を思ってだが、『他にはない喜びだから味わった方がいいよ』と言う。でもそれでしか味わえない喜びって一つじゃない。仕事はもちろんそうですし、例えばマラソンを走った人もよく同じことをいいますよね。自分が“バトン”を渡す相手がいないのは寂しいけど、世の中の子育てに参加していきたいです」

 -「産まない」「産めない」人が後ろめたさを感じることもある社会です。

 「東京都議会のセクハラやじなんかを見ると、いつまでたっても意識が変わらない人もいるんだなと思う。流産してしまう人や、不妊治療の結果が出ない人もいる。経済的な問題などで中絶する場合もある。みんなが一律に産みたいと思っている、というのは間違い。どれが正解かは他人が決めることではありません」

 -それぞれの短編を発表したのは2008~09年。産むことを取り巻く環境は当時から変わりましたか。

 「特に医学は日進月歩。産んだら社会的に一歩引かなきゃいけないという状況も、随分変わってきた。保育園など、仕事に復帰する環境が整っていなくて悩む人は多く、社会がもう少し成熟したらなと思う。作品ではステップファミリー(血縁関係のない親子やきょうだいを含む家族)についても書いた。家族をつくりたかったら養子という選択もあります。ゲイのカップルが子育てをしようとする『チョコレートドーナツ』という映画も話題になりましたよね。まだ日本では少ないが、今後はいろんなかたちの家族が増えていくのではないでしょうか」

 ▼あまかす・りりこ 神奈川県出身、50歳。中年にさしかかった女性の心情を描いた「中年前夜」(小学館)、「エストロゲン」(同)など。ファッションや映画などのエッセーも。

 ●メモ 出生の現状

 人口維持に必要とされる合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの数)は2.07。厚生労働省によると、戦後は2005年の1.26まで減り、近年は微増しているものの1.43(13年)にとどまっている。出生数は102万9816人で過去最少(同)。一方で妊娠中絶は18万6000件を超えた(13年度)。体外受精などの「特定不妊治療」に対する公的助成は約11万2000件(同)で年々増加している。40歳時点で子どもを産んでいない女性の割合も、1953年生まれが10.2%、69年生まれは27.0%と徐々に増えている。


=2014/12/18付 西日本新聞朝刊=

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