【こんにちは!あかちゃん 第25部】少子化 わたしの意見<4>養子縁組を選択肢に 福田稠さん

 ●あっせんする病院理事長 福田稠さん 
 -昨年5月、全国で初めて病院として特別養子縁組(養親と戸籍上の親子関係を結ぶこと)のあっせんを始めました。

 「貧困や望まない妊娠など不安を抱く母親らから1年間で356件の相談があり、5組の特別養子縁組が成立しました。少ないと思われるかもしれませんが、私たちは実の親が産み育てることを最優先にしています。助産師や臨床心理士などスタッフが助言した結果、多くの人が自分で育てる道を選んでくれました。将来育てられるようになれば引き取りたいという場合は、里親を探します。特別養子縁組は、実の親と法的な関係を絶つことになるため、最後の選択肢と思っています」

 -あっせんに乗りだした理由は。

 「児童虐待防止の観点からです。赤ちゃんが親に虐待を受けて死亡する事例が後を絶たない。核家族化と地縁の崩壊により、今の妊産婦は孤独な状態で世間に放り出されてしまう。特定妊婦(児童福祉法で出産後の子どもの養育について支援が必要と認められている妊婦)を、いかに出産前から経済的、精神的に支援していくか。一部の民間業者が、特別養子縁組のあっせんをめぐって養父母から多額の寄付金を集めて問題になりました。最初に接する機会が多い医療機関が、育児や生活面などあらゆる相談に乗りながら支援するのが有効です。日常業務としてやれば寄付金を受領する必要もありません」

 -そうした支援の中で特別養子縁組が果たす役割は。

 「出産と育児に問題を抱えた特定妊婦の立場からすると、選択肢が広がり、おなかの赤ちゃんも母親も救われる。働く女性が増えて晩婚化も進む中、不妊治療をしても妊娠できないケースも増えている。長くてつらい不妊治療を受けている夫婦にとっては、待望の“わが子”を授かることになります」

 -とはいえ、日本では親が育てられない子どもの9割近くが施設で暮らしています。

 「欧米では、第1子は実子で第2、3子は養子ということが普通にあります。日本では子どもは親に帰属するという考えや、血縁へのこだわりも強い。養子や里親への理解度が深まることは、社会全体で子どもを産み育てるという少子化対策の基本理念につながる」

 -人口減少社会に向け、政府は合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)の当面の水準を1・8(2013年は1・43)に設定した。

 「出生率が上がらないと急速に進む少子高齢化社会は持ちこたえられない。国の未来像を考えれば何らかの数値目標を掲げることは理解できます。ただ、女性が産み育てやすい環境や制度を整えないと、戦中の『産めよ殖やせよ国のため』になってしまう」

 「リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する健康と権利)という概念があります。人々は安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由があるということです。少子化対策の基本に女性の幸福がないと意味がない。母子に寄り添う医療機関の取り組みは微力かもしれませんが、少子化対策に貢献すると信じています」

 ▼ふくだ・しげる 熊本市出身、68歳。久留米大医学部卒、熊本大大学院修了。国立熊本病院勤務を経て1981年に福田病院院長、90年理事長。2010年4月から熊本県医師会長。

 ●メモ=特別養子縁組

 原則として6歳未満の子どもを、どちらか一方が25歳以上の養父母と縁組する制度。実親との親子関係がなくなり、戸籍上も実子と同じ扱いになる。1988年に国が制度化した。家庭裁判所の審判を経て成立する。最高裁によると成立件数は2004年以降、年300件前後で推移し、12年は339件。福田病院の場合、生みの親は出産後1週間、赤ちゃんと寄り添って気持ちが変わらなければ退院。入れ替わりに入院した養母が分娩(ぶんべん)台に横たわる出産に似た形で対面して約1週間滞在する。寄付金は受け取らず、経費は滞在費約10万円。養親に選ばれるには夫婦とも45歳前後を上限としている。


=2014/12/19付 西日本新聞朝刊=

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