【傾聴記】在宅介護 破綻防ぐ支援は

 介護は終わりが見えない。だから、取材した人たちの“その後”がとても気にかかる。寒さが厳しくなった年の瀬に、今年出会って、気がかりだった人たちを訪ねてみた。

 107歳の母親は特別養護老人ホーム(特養)の「ロング・ショート」で過ごし、1人で在宅介護していた長女(78)は骨折で入院していた。ロング・ショートは、特養入所を前提に自宅には帰らないショートステイ(短期間入所)を意味するという。

 今春、取材した福岡市のこの親子は老老介護の典型だった。母親は要介護5の重度の認知症。夜は何回も起こされ、ベッドと居間を何度も往復したがるため、体を支えるのがきつい…。長女は「(母親に)手が出るようになった自分が怖い」と話していた。

 自宅近くの特養に入所を申し込み、空きが出るのを待っていた。ただ、同じような待機者は全国に約52万4千人、福岡県でも1万8255人に上っている。

 11月末、重度認知症の人が多いフロアのベッドに空きが出て、まずはショートステイを利用することになった。施設にもなじみ、数カ月以内には正式入所できる見通しという。

 長女は気が抜けたのか、12月中旬、自宅の掃除中に転倒して手首を骨折。子どもはおらず、母親の担当ケアマネジャー(57)が支えている。「要介護者が落ち着いた途端、介護者だった家族が要介護者になってしまう。老老介護ではよくあるパターンです」と教えてくれた。

 熊本県の夫婦のその後も芳しくはなかった。「軽度認知障害(MCI)」の診断を受けた妻(74)を、夫(75)が温泉や行楽地に連れ出すなどして支えていたが、今は夫に疲れや不安が見えてきたという。自宅で支える家族への支援の必要性を痛感する。

 一方、福岡市で認知症の母親(91)を介護する男性(73)は明るい笑顔。月の約半分はショートステイを利用し「母親と自分のちょうどよい距離が分かった」と話す。もちろん、排せつの世話はつらいし、施設に預けることへの後ろめたさも感じるが、「認知症の人と家族の会」福岡県支部への参加を通じて「同じ悩みを抱える人は多い。体験を共有したい」と前向きだ。

 ただ、今後を考えると漠然とした不安に襲われる。母親を献身的に介護してくれる施設職員たちの低賃金が気になる。介護報酬引き下げの方針もある。「自分に介護が必要になったときも含め、安心して任せられる介護の質は維持できるのか」とつぶやく。

 来春以降、「施設から在宅へ」という国の施策を反映した制度変更が相次ぐ。特養入所は原則要介護3以上に限定され、特養の相部屋入居者からも部屋代を徴収することになり、比較的介護度が低い「要支援」の人たちへの介護サービスの一部は全国一律事業から市町村事業に移譲される。

 取材していると、在宅介護の現実は綱渡りだ。あるケアマネジャーが「介護者の愚痴はとことん聞いてあげるんです。その人が倒れたり、くじけたりしたら在宅介護は終わりますから」と話していた。介護者の心身の健康や経済状態など、ぎりぎりのバランスでようやく成り立っている。

 在宅介護の支援が整わないまま、介護が必要な高齢者を自宅や地域に帰しても、ぎりぎりのバランスが破綻するだけだ。制度の転換期、果たして本当に必要な支援が確保されるのか。注視したい。


=2014/12/25付 西日本新聞朝刊=

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ