子を失った遺族が集う 「学校事故・事件を語る会九州」発足 苦しみ共感し、支え合う

「学校事故・事件を語る会九州」の発足集会には遺族や支援者、弁護士などが集まった=7日午後、福岡市博多区 拡大

「学校事故・事件を語る会九州」の発足集会には遺族や支援者、弁護士などが集まった=7日午後、福岡市博多区

 学校で起きたいじめや体罰などによって子どもを失った遺族や、傷つけられた当事者が集う「学校事故・事件を語る会九州」が、このほど、九州・山口に住む遺族の呼び掛けによって発足した。子を失った絶望に加え、地域で孤立したり体調を崩したりする“二次被害”が起きるケースも多いという。遺族はどんな思いで集うのか‐。

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 発足集会が開かれた7日、福岡市博多区の会議室には、遺族や支援者、弁護士など約30人が集まった。

 呼び掛け人の一人、長崎市の安達和美さん(53)は2004年、次男=当時(14)=が教諭から指導を受けた直後に校舎から飛び降りて亡くなった。損害賠償を求めて長崎市を提訴すると、仲の良かった保護者が目を合わせなくなった。支援者も「安達さんをそそのかしている」と悪いうわさが流された。

 定期的に同じ立場の人たちが集う神戸市での「全国学校事故・事件を語る会」と出合い、集会を心のよりどころとしていたが、九州からでは毎回は出席できない人も多いことから、「語る会九州」の発足が呼び掛けられた。

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 どの参加者も「突然のことで、直後は何をしたらいいのか分からなかった」と口をそろえる。しかし、事件後、すぐに友人の証言などを集めたことが真相究明や勝訴につながった例もあり、集会では、参考となる手順を作る必要性も唱えられた。

 09年に、息子=当時(17)=が県立高校の剣道部の練習中に熱中症となり他界した大分県竹田市の工藤英士さん(49)、奈美さん(45)夫妻も、4~5日後から友人を訪ね、熱中症で倒れた息子に顧問が平手打ちするなどした目撃証言を集めた。「証言を文字にして弁護士に届ける日々が続いた。悲しい作業だった」。大分地裁に提訴し、県などの賠償責任は確定。元顧問らの賠償を求めて上告中だ。

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 朝は元気に「行ってきます」と家を出て行ったのに‐。わが子の死で、遺族の人生は180度変わる。そんな中、真相究明のために活動するのは、体にも心にも大きな負担がかかる。

 11年11月に息子=当時(14)=が「いじめを受けている」と不登校になり自死した、宮崎市の緒方経男さん(52)留美子さん(51)夫妻はうつや睡眠障害に苦しむ。生徒にアンケートをすると約束した校長は、年度末に転勤した。「学校も教育委員会も信じられなくなった」

 鹿児島県出水市の中村幹年さん(64)は、同年9月に13歳の孫が自ら命を絶った。いじめの有無を調べたアンケートを開示してもらえず、出水市を提訴した。「真相が知りたいだけなのに」。不信感やもどかしさは、遺族の苦しみを増幅させる。

 学校でのいじめや体罰がなければ、被害者は生まれない。そういう意味では「本当はあってはならない会」(工藤奈美さん)だが、発足には、共感し合うことで少しでも苦しみを軽くしたい、との思いもある。集会は福岡市内で年3回開かれ、次回は来年3月8日を予定。


=2014/12/27付 西日本新聞朝刊=

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