【変わる相続税】<3>生命保険を活用 非課税枠で申告不要

 相続財産の総額が基礎控除額を超えた場合でも、必ずしも相続税を納付しないといけないわけではありません。遺産総額から亡くなった人が抱えていた借金などの「マイナスの財産」や葬式費用、非課税財産を差し引いた分が相続税の対象になるからです。前回取り上げた「小規模宅地等の特例」などの適用で遺産の評価額が減額され、納税額がゼロとなるケースも少なくありません。

 とはいえ、相続税の申告は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に行うことになっています。1月からの税制改正で基礎控除額が従来より4割減少し、申告義務が発生する可能性が高まります。対象が拡大された「小規模宅地等の特例」などの特例を適用しようとする場合でも、この期限内に申告しなければなりません。きちんと申告していれば納税はなかったかもしれないのに、申告しなかったばっかりに納税義務が生じるようなケースが増えることが予想されます。

 申告するとなると、遺産分割の話し合いと並行して複雑な事務が増えることになります。申告に必要な書類だけでも、被相続人と相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書、遺言書か遺産分割協議書、被相続人の財産に関する書類や証明書など多岐にわたります。税理士に依頼し、必要書類を用意しながら申告書を作成すると簡単です。

 申告を不要とする方法の一つとして九州北部税理士会の末吉幹久税理士が提案するのが生命保険の非課税枠の活用です。

 生命保険会社に保険料を支払う人と、死亡したときに保険金や給付金が支払われる被保険者が同じ場合には死亡保険金の全額が「みなし相続財産」として相続税の対象になります。ただ「500万円×法定相続人の数」までが非課税なので、この枠内なら申告要件なしで相続財産総額に算入しなくて済みます。「被相続人が生前、手持ちの現金の一部を生命保険に掛けることで相続財産の総額を減らし、申告が不要となる場合もあります」と末吉税理士は助言します。

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 具体例で考えてみましょう。父親が死亡し、法定相続人は母親と子ども2人で相続財産の総額が5千万円という場合、基礎控除額は4800万円(3千万円+600万円×3)となり、相続財産が200万円オーバーするので申告義務が発生します。ただ、父親が生前に300万円を払って保険金300万円の一時払い(保障期間全体分の保険料について契約時にまとめて支払う)の終身保険に加入していれば、保険金は全額が非課税枠内。相続財産も基礎控除額を下回り、申告が不要になります=図参照。

 生命保険の非課税枠を活用しながら申告を不要とする利点以外にも、被保険者が亡くなったとき、すぐに現金(死亡保険金)が準備でき、相続人が葬儀代や納税資金、当面の生活費に充てることができます。

 生保では受取人を指定でき、死亡保険金が受取人の財産になります。遺産分割の対象にならないため、遺産分割協議を待たずに受け取ることができます。法定相続分とは別扱いなので相続人以外にも財産を残すことに使えます。末吉税理士は「相続税を減らすという効果はあまり大きくないかもしれませんが、特定の人に財産を残すには、有効な方法といえるでしょう」と話しています。


=2015/01/24付 西日本新聞朝刊=

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