【耕運記】放置竹林 再生と若者の自立支援と

のこぎりで切った竹は抱えて竹林の外に移動する 拡大

のこぎりで切った竹は抱えて竹林の外に移動する

伐採した竹を運び出すハートスタッシオンのメンバー

 竹の箸を愛用していた時期がある。微妙な弾力に柔らかな使い心地の良さを
感じたものだ。

 かつて竹は軽くて加工しやすい資材として活用された。収穫かご、ざるなどの農業用具や日用品をはじめ、土壁に塗り込む建築資材としても欠かせなかったという。尺八や笛といった楽器、竹刀や弓などの武具も作った。里山の竹林が人々の生活や文化を支えた。

 時代が移り、そうした資材はプラスチックや金属に変わった。竹林は今や放置され社会問題化している。

 「密集した竹林は栄養分を求めて外に広がり、周辺の田畑や宅地を使えなくする。森を侵食すると光が遮られ、樹木は枯れてしまう。管理されていない竹林も茎が地下30センチ以下の浅い所に集中し、大雨で地滑りを引き起こしやすい」。里山の再生に取り組むNPO法人北九州ビオトープ・ネットワーク研究会のデワンカー・バート理事長(北九州大教授)は指摘する。

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 福岡県によると県内の竹林は2013年1万2556ヘクタール。1974年の9818ヘクタール、94年の1万1165ヘクタールと着実に広がっている。

 県は放置竹林の樹種転換のため造林補助事業などを進める。またタケノコの収穫や竹林の手入れを体験できる一定区画を市民と賃貸契約する「オーナー制度」を導入する自治体もある。

 竹の活用策を探る動きも。同県八女市は第三セクターで竹炭や竹酢液を生産するほか、九州工業大と協力して自動車の内装材など高付加価値製品の研究を進める。

 元林野庁職員で森林インストラクターの財津忠幸さん(72)によると、竹は生活必需品の材料だった歴史から、人家に近い里山に生えていることが多い。拡大被害を防ぐには、かつてのようにタケノコの収穫や伐採をし、地道に手入れするしかないという。

 財津さん自身、竹の新たな需要を生み出そうと大分県日田市の秋のイベント「千年あかり」に携わる。幻想的な明かりで街を包む3万本の竹灯籠は伐採、製作まで市民、企業ボランティアが担う。

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 福岡市早良区脇山の竹林に先日、足を運んだ。すぐ横に室見川支流の椎原川が流れる。竹林保護と、就労などに悩む若者らの自立を支援するNPO法人ハートスタッシオンの作業場だ。

 直径十数センチの竹をのこぎりで切り、抱えるようにして運び出す。「結構な力仕事だし、斜面が多く危険も伴う」。多くの人手が要るが、なかなか集まらないのが同法人理事長の藤本蔦枝さん(68)の悩みだ。

 この日集まったメンバーは8人。切り出した竹を切断し、竹ランプの材料を準備した。このほか竹炭、花生けなども作っている。

 同法人は元々、若者たちの居場所づくりを目的に心理カウンセラーらが設立した。自然体験の一つだった休耕地でのブルーベリー栽培を通じて、竹林問題の深刻さを知った藤本さんが「できることから始めよう」と関係者が所有する竹林の整備を始めた。

 「直径20センチの竹5千本が欲しいという問い合わせが来たこともある。まだ対応できないが、きちんと管理してそんな需要に応えられれば、貴重な資源になる」

 若者の自立支援とともに竹林の再生を実現するには継続が求められる。そのためには経済的に自立する仕組みも必要だ。たとえ小さな試みであっても、その一歩が欠かせない。

 一住民としてできることはないのか。お気に入りの竹箸を見つけることから始めてもいいかもしれない。

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 福岡県内の保護団体が集まる第8回竹林サミットin久留米が2月21、22日に久留米市の筑後川防災施設「くるめウス」である。放置竹林の報告や活動発表があり、2日目は加工会社や工房を訪れる。問い合わせは実行委員会事務局=0942(45)5042。


=2015/01/28付 西日本新聞朝刊=

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