【平和教育を考える】戦争 演じて追体験 福教大付久留米中 心情重ねて理解深め

太平洋戦争時のフィリピンに迷い込んだ中学生の蓮(左)は、仲間を守ろうと現地の少女(中央)に銃口を向ける 拡大

太平洋戦争時のフィリピンに迷い込んだ中学生の蓮(左)は、仲間を守ろうと現地の少女(中央)に銃口を向ける

ビルマ戦線に派遣された私の祖父の日記を見つめる生徒たち

 福岡県久留米市の福岡教育大付属久留米中の生徒が、戦争の狂気に迫る自作劇に挑戦した。題名は「Soldier(兵士)」。太平洋戦争中のフィリピンにタイムスリップした男子中学生が、銃を手にする過程で生まれた葛藤を丁寧に描いた。祖父も戦後生まれという生徒が多い中、劇を通じた追体験によって戦争と平和への理解を深めた。

 「蓮(れん)、もしかして人を撃ったのか?」

 「仕方ないだろ。撃たなきゃこっちがやられるんだよ!」

 「人を撃つのが仕方ない? おまえどうかしてるんじゃないのか」

 フィリピンで日本軍に襲撃された集落へタイムスリップした男子生徒の洸は、体を震わせながら銃を構える級友の蓮に詰め寄る。一方で日本軍の一員となり、仲間を守るため人の命をあやめることを受け入れた蓮は、「一体何が正解だと言うのか‐」と葛藤する。だが両親を奪われた現地の少女に寄り添う洸には、蓮の心境が全く理解できない。

 「戦争と平和を訴える劇を作ろう」。同校の3年3組は、クラス別に劇を発表する秋の文化祭に向けて、昨年6月にテーマを決めた。そのころ、合唱で平和を題材にした曲を歌ったのがきっかけだった。さっそく台本作りに取り組み練習を重ねた。だが発表まで1カ月と迫った9月末、生徒とともに制作に取り組んだ担任の金子尋紀教諭(41)は「戦争と平和の深い理解に至っていない」と感じた。

 時を同じくして、本紙連載「祖父に導かれて 『ビルマ』への旅」が始まった。記者(私)がビルマ(現ミャンマー)戦線を戦った祖父の日記を基にかつての戦地を訪ね、当時の状況や心情に思いをはせる内容。金子教諭は戦争を知らない世代が戦争を描くという共通点から、「実物の日記に触れることで生徒たちの戦争への理解を深めたい」と考えた。

 記者が訪問すると、変色した祖父の日記を囲んだ生徒たちは「漢字ばっかり」と目を丸くしつつ、祖父が戦うよりどころにした「愛国心」とは何だったのか、興味を寄せていた。

 「戦争を分かったつもりでいたが、史実だけで人を見ていなかった」「人ごとのように思っていた戦争が身近に感じられた」。生徒たちの声からは、戦時中の社会や、その時代を生きた人々の心情を理解しようとする姿勢がうかがえた。

 題名の「Soldier」には、敵や戦争という状況と戦った個々の人間を描くという思いが込められている。その狙いに少しずつ近づきつつあるのを、金子教諭も感じた。

 フィリピン戦線の日本軍に加わった蓮役の浅田崚斗(りょうと)さん(3年)は、戦争に関心が薄い中学生が、戦場で友情に触れて変化していくさまを演じきった。「最初はテーマが重く難しいと感じたが、一番理解が難しかった愛国心を、家族や仲間を思う気持ちと理解することで演じられた」と話した。

 戦争の「語り部」役に挑戦することで、戦争体験者の心情について深く考えた生徒たち。金子教諭は「平和学習もこうあるべきなのかと、教師として考える機会になりました」。戦後70年を迎え、戦争体験者が先細りする中、どのようにして体験を語り継ぐか。生徒たちの劇は、一つの試みとして可能性を示した。


=2015/02/03付 西日本新聞朝刊=

PR

PR

注目のテーマ