【生きる働く】68歳 シニア見守る 福岡の伊藤さん 弁当宅配に喜び

昼食と夕食の1日2回、弁当を宅配する伊藤さん。お年寄りとの会話も弾む 拡大

昼食と夕食の1日2回、弁当を宅配する伊藤さん。お年寄りとの会話も弾む

 本紙生活面で1月に掲載した年次企画「生きる 働く」の第1部「私がハタラク理由」には、読者の方からたくさんの反響をいただきました。連載では独居老人宅に弁当を宅配するコンビニ店員の竹下芳則さん(66)=北九州市=を取材しましたが、「私も頑張っている」との手紙をいただきました。便りの主、伊藤幸雄さん(68)=福岡市=に会いに行きました。

 「弁当ですよー」。1月下旬の夕方、住宅街に伊藤さんの野太い声が響く。昼食と夕食の1日2回、お年寄り宅に軽ワゴン車で弁当を届ける。「待っとったよ。お疲れさん」。玄関先で弁当を手渡しするお年寄りとの会話も弾む。

 元製薬会社の営業マン。定年後は警備会社などで働き、昨年6月から福岡県高齢者福祉生活協同組合の粕屋給食センター(福岡県須恵町)に再就職。厨房(ちゅうぼう)の調理員や配達員のスタッフ約20人のほとんどが70代だ。「自分ははなたれ小僧」と笑う。

 配達先のお年寄りは80~90代が中心。減塩、ご飯大盛り…。健康面や好みで細かく弁当を作り分けている。配る弁当を間違えたり、庭先で飼い犬にかまれたり。五つある宅配コースのうち二つを任されるが、30~50戸ある配達先を覚えるのは簡単ではない。「いっぱい失敗したけど、落ち込む暇があったら仕事を覚えたい。じいちゃん、ばあちゃんたちは弁当が届くのを楽しみにしているから」

 昨秋、昼食を配達していたときのこと。ある80代男性は足が悪く、いつもちゃぶ台の前に座って待っていたが、その日は布団に横たわったまま起きてこない。「じいちゃん! 弁当ばい」。何度声を掛けても応答がない。揺り起こそうとすると冷たくなっていた。孤独死だった。

 「最後にみとったのが自分やけん、切ないね…。でも、弁当を配ることで見守りになっとると思う。もっと声掛けして危険を察知したい」。月20日ほどのシフトで月給約6万円。「自分を年寄りと全く思っていない。今、働くのが楽しくて仕方ないとよ」。言葉に迷いはなかった。


=2015/02/03付 西日本新聞朝刊=

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