【耕運記】食育劇団 命の循環 親子で考えて

「食と命を伝えたい」と言う女性たちのダンスや劇に園児たちは見入った 拡大

「食と命を伝えたい」と言う女性たちのダンスや劇に園児たちは見入った

 黒ずくめの女性たちが音楽に合わせて腰を振りだした。園児たちも立ち上がって一緒にダンス、時に笑い声も聞こえる。

 1月下旬、福岡市西区の保育園。保護者会主催の観劇会に登場したのは食育劇団「和楽」だ。野菜をかたどったパネルを手に踊り、うんちが主役の紙人形劇、暗がりに人形や風景が浮かび上がるブラックシアターと次々に繰り出す。大喜びで見入る園児たちに「子どもの純粋さが、じっと見つめる目から伝わってきた。これまでしてきたことは無駄じゃなかったんだと感じた」。座長の堀内玲子さん(60)は感激した様子で話した。

 活動5年目の「和楽」の団員は50~60代の主婦、保育士ら女性9人。発声法や劇のノウハウを専門家から授業料を払って学んでいる。人形などの小道具は手作り。保育園や老人施設、各種イベントなどで公演しており、この日は車3台に乗り合わせて福岡県小郡市、筑後市などから駆けつけた。

 「命は自分だけのものではない。命の循環の中で生かされていることを伝えたい」。初代座長の奥村晴美さん(53)が食育を冠した狙いを語る。自分がここにいるのは父母、祖父母、曽祖父母…と脈々とつながってきた命があるから。今を生きるために牛や豚、魚、野菜などの命を食しているということ。劇では、先祖について語り合うストーリーなど随所にその思いがにじんだ。

 「おばちゃんたち手作りの劇団が、いつかブロードウエーでやれたら素晴らしいでしょう」。とてつもなくでっかい夢もある。園児のための食育だったが、自分たちも主役。「共に感動したい」と語る通り、教え教えられるを超えて一緒に楽しむ姿が印象に残った。

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 食育について定めた食育基本法は2005年施行。基本方針として、国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成▽食に関する感謝の念と理解▽保護者、教育関係者の役割‐など7項目を示す。ただ「健全な食生活を実現する」や保護者の役割を定めた条項の「積極的に活動に取り組む」などの文言からは、食育の最も基本の場となるはずの家庭で具体的に何をしたらいいのか見えてこない。

 懸命に演じる女性たちと、それを見つめる園児たちを眺めながら、一緒に楽しむことにヒントを感じた。子どもを教えるためには、大人も食を学ばなければならない。食育は「命」を学ぶこと。その大枠を確認した上で、親子一緒にできることを探したい。

 取っつきやすくて継続できるものに日々の食事がある。まずはおかずを話題にしてはどうだろう。スーパーなどでは産地を明記した野菜、肉、魚が並んでいる。その産地について話してもいい。一緒に話し、それから一緒に作る。一歩一歩進むしかない。

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 子どもたちの反応は素直だ。劇の中で最も反応したのは、予想通り?「うんち」の話。来場していた保護者会役員の母親たちの関心も引いていた。汚い物とだけ思われがちだが、いかに大切かを伝えてもらえた、と話してくれた。

 うんちは体のお便り。健康度を知ることができる重要な情報という。80%が水分。色は黄色か黄褐色で水に浮く。食物繊維が見えるほどよく、これは野菜をたくさん食べた証拠。一日の量はバナナ2、3本分(300グラム以上)というのが腸内菌研究の第一人者、理化学研究所(埼玉県)の辨野(べんの)義己・特別招聘(しょうへい)研究員が示す理想的な便だ。

 流す前にチェックして、親子一緒にうんちの話という手もある。


=2015/02/04付 西日本新聞朝刊=

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