高齢者 地域で暮らし続けて 空き家提供 生活支援 全国でモデル事業

大分県豊後大野市の「くすのきハウス1号」。自宅で暮らせないお年寄りが食事などの支援を受けながら生活している 拡大

大分県豊後大野市の「くすのきハウス1号」。自宅で暮らせないお年寄りが食事などの支援を受けながら生活している

 日常生活の手助けや住み替えが必要になった高齢者に、空き家を活用して住まいを提供するモデル事業が、大分県豊後大野市や福岡市で進んでいる。日常の見守りや食事など生活支援も併せて提供することで「在宅」と「施設」の中間的な役割を果たし、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを目指す。

 豊後大野市緒方町の2LDKの民家。70代の男性3人が、生活支援員が作ったお好み焼きの昼食を食べていた。支援員と雑談したり、テレビを見てくつろいだり。3人とも自宅にいたときより、顔色が良くなり、笑顔が増えたという。

 民家は「くすのきハウス1号」。近くで養護老人ホーム常楽荘を運営する社会福祉法人偕生(かいせい)会が2014年10月、空き家を月3万円で借りて開設した。厚生労働省が昨年、全国8市町で始めた「低所得高齢者等住まい・生活支援モデル事業」の一つで、別の民家(3DK)と計2軒を運営している。

 開設から約3カ月。同居家族に虐待を受けていた人、認知症で1人暮らしが難しくなった人など、支援は必要だが、施設に入所するほどではない高齢者ら9人が入居。利用期間は1日~3カ月で、大半は問題が解決して自宅に戻った。現在は2軒に2人ずつが暮らしている。

 厚労省からの補助金は年間約540万円で、最長3年間。生活支援員が食事時に訪れて調理し、利用者は食費や光熱費などとして1日1900円を払う。

 半身まひがある要介護1の男性(76)は妻、独身の長男との3人暮らしだった。身の回りの世話をしていた妻が体調を崩して緊急入院後、長男は男性の世話をしなかった。食事もままならず、デイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所)などの介護保険サービスを使ってしのいでいたが、経済的負担が大きくなりすぎた。

 そこで、くすのきハウスに入居。別居すると、長男も父親を心配するようになった。男性は「ここが一番安心できる」と、週4日デイサービスに通い、手助けを受けて洗濯などの家事もしながら妻の退院を待つ。

 事業の中心となる常楽荘施設長の浅倉旬子さん(56)は「施設に入ると、職員に何でもやってもらえるため、自分でできることが少なくなり、状態が悪化してしまう」と指摘。「ほんの少しの支援で自宅や地域での暮らしを続けられる人は多い。今は施設か在宅かの二者択一しかないが、中間的なサービスが必要」と、モデル事業終了後の事業継続を模索する。

 一方、福岡市は1人暮らしをする力はあっても住居を確保できない高齢者の支援に取り組む。同市では空き家や空き室が増加する半面、「保証人がいない」「緊急時に対応してくれる身寄りがいない」「孤独死などのリスクがある」といった理由で賃貸住宅に入居できない高齢者も多い。

 このため、市社会福祉協議会(市社協)が中心となって、日常の見守り、死後の葬儀や家財処分などを請け負う死後事務委任、家賃債務保証などのサービスを提供する企業や団体を登録。不動産業者の協力も受け、一人一人に合わせたサービスを提供することで、賃貸住宅への入居を調整する。

 事業開始は昨年10月。「足腰が弱くなって階段の上り下りがきついため、1階に移りたい」という男性(75)など3人が賃貸住宅に入居できた。家主にとっても安心して空き室を活用できるメリットが生まれる。

 厚労省の補助金で運用しているが、今後は事業継続のための財源確保が課題となる。市社協の担当者は「無縁社会の今、保証人を確保できる人の方が少なくなる。不動産業界と連携し、持続可能な新しいビジネスモデルを構築したい」としている。


=2015/02/05付 西日本新聞朝刊=

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