着床前スクリーニング(受精卵検査)臨床研究 公開シンポ 参加者から賛否

着床前スクリーニングについて、賛否さまざまな意見が交わされた公開シンポジウム 拡大

着床前スクリーニングについて、賛否さまざまな意見が交わされた公開シンポジウム

 ■新訳男女 語り合おう■ 
 ●「流産しにくい妊娠を希望する権利」 「影の部分にもきちんと焦点あてて」
 
 日本産科婦人科学会は7日、体外受精させた受精卵の全ての染色体異常を調べ、異常がないものを子宮に戻す「着床前スクリーニング」(PGS、受精卵検査)の臨床研究についての公開シンポジウムを東京都内で開いた。臨床研究は、2月末の理事会で実施を正式決定し、今年中にも始まる見通し。医療関係者や市民ら約300人が参加し、賛否さまざまな意見を交わした。

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 臨床研究は、流産を2回以上繰り返している女性や、3回以上体外受精に成功していない女性が対象。スクリーニングを行う人と行わない人300人ずつを集め、流産を減らし、妊娠や出産の可能性が高められるかどうかを検証する。

 シンポではまず、学会側が着床前診断の近年の動向や臨床研究の概要を説明した。受精卵の検査には、特定の遺伝子や染色体だけを調べる「着床前診断」(受精卵診断)と、全染色体を調べるPGSがある。学会は、1998年に重い遺伝病の可能性がある場合に着床前診断を認める方針を策定。2004年に1例目が承認され、06年には習慣流産へ対象が拡大された。

 PGSは欧米では1990年代から実施されているが、効果があるかどうかは分かっていない。妊娠、出産の高齢化で、不妊治療患者が増え続け、遺伝子解析技術が進歩する中、「日本でも検証を始める時期」との声があり、学会内での約1年間の議論を経て、臨床研究の実施が決まった。

 セント・ルカ産婦人科(大分市)の宇津宮隆史院長は、不妊治療患者に対して行ったアンケートの結果を紹介。患者のほとんどがPGSを「認めるべきだ」と回答、6割は今後「受けたい」としたと報告した。倫理的問題を指摘しながらも、「流産は心身ともにつらい」「治療の経済的負担を減らしたい」といった意見が目立ったという。

 宇都宮院長は「流産は女性にとって非常にショックな経験。流産しにくい妊娠を希望する権利もある」と研究に前向きな意見を述べ、「不妊治療の終結は難しいが、正常な受精卵がないと分かればやめる決心もつく」との考えも示した。

 一方、東京都立墨東病院の久具宏司産婦人科部長は、PGSによってダウン症など染色体の数の異常による病気のほか、性別も判明し、今後はさらに検査できる遺伝情報が増えると説明。「病気発症のリスクや個人の特徴が分かるようになれば、『完璧な子』を求める可能性につながる」と慎重な姿勢を示し、「技術によって生じる影の部分にもきちんと焦点をあてるべきだ」と話した。

 会場からの意見を求める討論では、「神経筋疾患ネットワーク」代表の見形信子さんが「命の可能性を受精卵の段階で廃棄される対象者の一人として、(臨床研究は)やめてほしい。障害があっても祝福され、育み合える社会をつくりたい」と話した。また、「市民に十分な情報が公開されていない」などの意見も出た。

 学会倫理委員会の苛原(いらはら)稔委員長は「まずは(流産の)治療にPGSが有用かどうかを検証したい。意見は臨床研究の中にも生かしていきたい」と締めくくった。


=2015/02/14付 西日本新聞朝刊=

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