糸を縦に 心を横に 師の教え胸に創作 染織工芸家の甲木恵都子さん 九博で活動50周年個展

作家活動50周年記念の個展を開いている染織工芸家甲木恵都子さん 拡大

作家活動50周年記念の個展を開いている染織工芸家甲木恵都子さん

 那珂川町埋金地区在住の染織工芸家甲木恵都子さん(80)の作家活動50周年を記念する個展「女人平家物語」(西日本新聞社など後援)が、太宰府市の九州国立博物館ミュージアムホールで開かれている。3月1日まで。

 甲木さんは東京生まれ。30歳で、人間国宝の故宗広力三氏(岐阜県郡上市)の郡上紬(つむぎ)と出会い、「素朴で美しく、迫力ある」作品に魅せられて、宗広氏に師事した。東京に工房を構えて文化庁長官賞など受賞歴を重ね、1973年に日本工芸会正会員となった。83年、草木染の染料となる植物や澄んだ水に恵まれた豊かな自然、創作に集中できる環境を求めて那珂川町に移住し、山あいに工房を建てた。

 展示作品は東京時代を含め、これまで制作してきた着物や帯計約40点。多くは、那珂川町移住後に取り組んできた「平家物語」、とりわけ女性の登場人物に題材を求めた作品だ。

 壇ノ浦の合戦で入水した安徳天皇の母、建礼門院徳子を主題とした着物「慈光」は染料にヤマモモや刈安を用いた総がすりの作品。淡い紫や黄、かすりの白が穏やかな輝きを放ち、平家一門の栄枯盛衰を一身に集めた徳子の華やかさ、悲しさ、苦しみを表現した。傍らには、徳子に仕えた女官右京大夫をモチーフに織った着物「今昔」。紫や黄の色合いをわずかに濃く表した作品に、右京大夫の詠んだ歌が添えられている。「いまやゆめ むかしや夢と まよはれて いかに思へど うつつとぞなき」

 甲木さんは平家物語について「人間の強さ、弱さ、悲しさ。さまざまな思いがかきたてられる」と話す。

 師宗広氏の「糸を縦に、心を横に、温かき安らぎの絹を織る」との教えを胸に創作活動を続けてきた甲木さん。「支えてくださった多くの方々のおかげ。命ある限り、織り続けなければならないと思っています」

 観覧無料。


=2015/02/28付 西日本新聞朝刊=

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