介護報酬改定Q&A<下>専門家2人に聞く

鹿児島大法科大学院教授(社会保障法)伊藤周平さん 拡大

鹿児島大法科大学院教授(社会保障法)伊藤周平さん

久留米大文学部教授(高齢者福祉論)鬼崎信好さん

 4月から、介護サービスの価格を見直す介護報酬改定、介護保険制度改革による影響が、介護現場に押し寄せる。介護や介護保険の在り方、将来について専門家2人に聞いた。

 ●鹿児島大法科大学院教授(社会保障法) 伊藤 周平さん 現場での事故増を懸念

 ‐介護報酬改定をどうみるか。

 非常に厳しい。賃金が下がれば人手が減り、介護現場でのミスや事故につながる懸念が大きく、高齢者の命に関わる。介護職員処遇改善加算をはじめ、事業者が報酬を増やせる「加算」はあるが、介護給付費抑制ありきの減額改定なのだから、加算の要件は厳しいだろう。介護職員の待遇や介護サービスの充実につながるとは思えない。

 ‐介護報酬を上げるばかりでは、介護保険制度が破綻してしまうのでは。

 介護職員の賃上げは、介護保険料に連動しない交付金で行うべきだ。そもそも介護はすべて税金で賄う公的サービスであるべきだ。法人税を引き下げず、累進課税を強化すれば、財源は確保できるはずだ。

 ‐介護を施設から在宅に誘導する姿勢が色濃い。

 施設も在宅も必要だ。一連の介護保険改革で、介護度が軽い「要支援」の人の通所・訪問介護を自治体に移行する改革は無理がある。身体介護はボランティアにはできないし、担い手を確保できない。要支援の人の切り捨てにつながる。

 ‐介護の人材確保策として、外国人技能実習制度の対象職種に介護分野を加えることが検討されている。

 外国人実習生の活用は反対。介護の労働力を期待するなら移民として受け入れるべきだ。それより介護職の待遇改善を急ぐべきだ。

 ●久留米大文学部教授(高齢者福祉論) 鬼崎 信好さん 自己負担いずれ3割に

 ‐9年ぶりの引き下げとなった介護報酬改定をどうみるか。

 団塊の世代が75歳以上になる2025年を見据えると、介護費の伸びを抑えなければ対応できず、やむを得ない。介護保険サービスは税金を使っている以上、納税者の目を意識した政策を展開すべきだ。

 ‐介護の人材不足が加速するとの見方もある。

 確かに、10年後は介護職が30万人不足するとの推計もある。介護報酬を上げて賃金を上げるのは簡単だが、利用者負担や保険料に跳ね返るので悩ましい。

 ただ、特別養護老人ホーム(特養)でみると、25年前は平均年齢72~73歳、全介助が必要な人は3分の1だったが、現在は平均年齢が10歳ほど上がり、要介護度も重く、75%に認知症傾向があるといわれている。

 介護職の仕事がハードになっていることを認識し、質の高い介護のため、国民の負担が必要だと納得してもらうしかない。

 ‐介護における負担は増えていくのか。

 現実に、介護保険サービスの利用者負担(1割)が、8月から一定以上の所得があれば2割に引き上げられる。将来的に医療保険と同様、3割まで引き上げられるだろう。40歳から負担する介護保険料の対象年齢引き下げも現実味を帯びてくる。こうした負担を見据えた人生設計が必要な時代になっている。


=2015/03/05付 西日本新聞朝刊=

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