【そもそも講座】労基法改正案 今国会提出へ 「成果賃金」「残業代ゼロ」 長時間労働防げるか

 ●労基法改正案 今国会提出へ 
 働いた時間ではなく、成果に応じて賃金を支払う「高度プロフェッショナル制度」の導入を柱とする労働基準法改正案が、今国会に提出される見通しとなった。一部の労働者を労働時間の規制から外すという、雇用ルールを大きく変える新制度。今後、働き方はどう変わるのだろうか。

 ●「成果賃金」「残業代ゼロ」 長時間労働防げるか

 労働基準法は、労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定め、超えた場合は企業は残業代を支払う必要がある。「高度プロフェッショナル制度」は、この規制を外すものだ。

 対象となるのは、年収1075万円以上(平均給与額の3倍超)で、金融アナリストやコンサルタント、為替ディーラー、製薬の研究開発職など高度な専門職を想定。適用には本人の同意が条件で、企業は働き過ぎ防止のために、在社時間に上限を設けたり、年104日以上の休日を取得させたりなどの対策を講じる。

 政府は賃金と労働時間の関係を断ち切れば効率的な働き方ができ、労働時間の短縮につながると説明する。制度について議論してきた厚生労働省の労働政策審議会では、経営者側が「多様な働き方の選択肢が経済発展につながる」と歓迎する一方、労働者側は「成果を求められ、残業代ゼロで長時間働かされる」と最後まで反対した。

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 労基法改正の背景には、日本社会にはびこる長時間労働がある。総務省によると、2013年時点で週60時間以上働く人は474万人で、全体の8・8%。有給休暇の取得率は5割程度で、正社員の約16%は有休を1日も取得していない。

 世界的に見て突出した長時間労働だが、効率は良くない。日本生産性本部(東京)の調査では、13年の日本の就業1時間当たりの労働生産性は41・3ドル。米国(65・7ドル)より約4割低く、先進7カ国(G7)で最低と
なっている。

 改正案では、働き過ぎの是正策として、労働者に年5日の有休を取らせるよう企業に義務付けることや、中小企業で月60時間超の残業代を25%から50%に引き上げることも盛り込まれた。ただ、英国やフランスで導入されている、働く時間の上限規制や、終業と始業の間に一定時間の休息を義務付ける「インターバル規制」については、労働者側が導入を求めたが、盛り込まれなかった。

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 労働規制の緩和を、安倍政権は成長戦略と位置づける。8年前、第1次安倍政権は同様の制度の導入を目指したが、世論の反発を受けて断念した。そこで今回は対象者を大きく絞り込んだ。ただ、年収1千万円を超える給与所得者は、管理職を含め全体の4%。限定的な緩和が成長につながるかは疑問で、経営者側も適用拡大を求めている。

 欧州連合(EU)では、法令で同一職務の時間当たりの賃金が、同じ産業の中であれば横断的に統一されている。仕事の難易度など客観的な基準で賃金が決まるため、成果に応じた賃金が保障され、転職もしやすい。一方、日本では、賃金は年齢や勤続年数などで決められる。成果をはかる基準があいまいで、転職もしにくい。

 古くからの雇用慣習が根強く残る中、成果で賃金を決める仕組みは、本当に生産性の向上につながるのか。働き方改革をめぐる国会論戦に注目したい。


=2015/03/07付 西日本新聞朝刊=

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