今月退任の九博・三輪館長 「市民参加」の理念貫く 海外博物館とも積極連携

多くの来場者でにぎわった第1回特別展「美の国日本」。日本美術をアジア史の観点から捉える試みだった=2005年、福岡県太宰府市の九州国立博物館 拡大

多くの来場者でにぎわった第1回特別展「美の国日本」。日本美術をアジア史の観点から捉える試みだった=2005年、福岡県太宰府市の九州国立博物館

 官民一体となった長く、熱い誘致運動の末に、歴史の薫りあふれる福岡県太宰府市に九州国立博物館(九博)がオープンして10年。開館準備段階から九博にかかわり、九州随一の文化拠点に育て上げた三輪嘉六館長がこの春、太宰府を去る。長引く不景気で各地の博物館が苦戦を強いられる中、「アジア重視」「市民参加」といった九博ならではの理念にこだわり、運営をリードしてきた。名物館長の退任で、九博は新たな時代を迎えることになる。

 古来、アジア諸国との交流窓口を担ってきた九州。その歴史を踏まえ、九博は「日本文化の形成をアジア史的観点から捉える」という基本理念を据え、常設展や特別展で中国やベトナム、チベットと日本との文化的つながりを紹介してきた。三輪館長も常々、「互いの文化を知ることで敬意を払い、文化的・経済的な発展につなげたい」と繰り返してきた。

 並行して、海外協力体制を構築してきた。2006年、韓国の国立扶余博物館と初めての学術文化交流協定を締結。中国の南京博物院(07年)、内蒙古博物院(10年)、ベトナム国立歴史博物館(11年)、タイ文化省芸術局(12年)など計8機関と友好関係を築き上げた。九博が誇る最新機器を使っ
た保存修復技術は国内にとどまらず、海を越えて活用されている。

 アジア重視とともに、三輪館長が繰り返してきたのは、「市民との共生・協働」だった。収蔵庫を窓越しに公開するバックヤードツアーはその代表例。博物館運営を支えるボランティアの多さも九博の特色だ。

 「学校よりも面白く、教科書よりも分かりやすく」も三輪館長の口癖だった。アジアの文化や遊びを体験できる空間「あじっぱ」を無料開放し、特別展では子ども向けの解説文を用意。文化財のミニチュアを触れる学校用教材も開発した。

 「国立」という言葉に付随しがちな「堅さ」や「敷居の高さ」を取り除きながら、アジアを軸に独自色のある企画展を展開して人を集める。傍ら、文化財の保存・研究機能も高めていく-。一定の評価を得たそんな三輪スタイルの継続ととともに、さらなる成長を九博にもたらす新たな展開も次の館長には期待される。

     【特別展入場者数 ベスト5】
     展覧会名          期間   入場者数
国宝 阿修羅展(2009年)    68日間 71万1154人
美の国 日本(2005年)     43日間 44万1938人
ゴッホ展(2011年)       42日間 35万4311人
若冲と江戸絵画(2007年)    62日間 30万171人
台北 國立故宮博物院(2014年) 51日間 25万6070人


=2015/03/15付 西日本新聞朝刊=

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