乳がん患者 再出発の力に 福岡のNPO法人 人工乳房を販売

 今や日本女性の10~12人に1人がかかる乳がん。診断された年約6万5千人のうち4割が全摘手術を受けるというが、乳房がなくなってしまう精神的なダメージは大きい。そんな女性たちに寄り添う人たちがいる。

 鏡に映った自然なバストラインに涙が止まらなかった。乳がんの全摘手術をした人に人工乳房を委託販売しているNPO法人「ウィッグリング・ジャパン」(福岡市)のボランティアスタッフ、満安諏美さん(70)はあのときの喜びを忘れない。

 37歳で乳がんと診断され、全摘手術で左の乳房を失った。自分のこれからのこと、家族のこと…。不安が募る中、33年前に出合ったのが、米国製の人工乳房だった。手術直後はガーゼやタオルを巻いてブラジャーに入れて無理やり盛り上げていたが、ブラジャーのカップにおわん型の人工乳房を入れると自然な曲線を描いてくれた。「劣等感から解放され、胸を張って生きられるようになった」

 乳房を“取り戻す”には、人工乳房を胸の部分に埋め込んだり、おなかの筋肉などを移植したりする「再建手術」があるが数十万円かかる。左右対称になりにくく、何より「一度全摘手術で体にメスを入れたのにまた手術する精神的な負担が大きい」と満安さんはブラジャーに入れるパットタイプの人工乳房を推奨する。2、3万円で済み、買い替えも簡単だ。これまで約1万人の患者に薦めてきた。

 人工乳房は進化を続けている。医療用具製造・販売のナチュラルブレスト(同)は昨夏、肌に密着する粘着性がある特殊なシリコーンを開発。医療用接着剤を使わない人工乳房の装着を可能にした。従来のタイプは取り外しに30分ほどかかっていたが、瞬時に取り外しできるようになった。オーダーメードの人工乳房は30万~90万円ほどかかるが、大きさや色合いで24種類の既製品にすることで1個15万8千円(税別)に抑えた。

 現在は、全摘手術で残った方の乳房の写真からデータを取り出し、3Dプリンターで型を制作するオーダーメード製品の開発も進めている。本田幸恵社長は「全摘手術で傷ついた女性の気持ちが少しでも軽くなるお手伝いをしたい」としている。

 ◇ウィッグリング・ジャパン=092(725)6623▽ナチュラルブレスト=092(292)3883


=2015/03/17付 西日本新聞朝刊=

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