認知症在宅介護 日独シンポ 熊本 基調講演 家族支援住民と協働必要 独の医師と熊本の介護施設副施設長

 認知症の人の意思に沿った在宅支援を考えるシンポジウム「認知症の人を支えるネットワーク」が2月11日、熊本市の熊本学園大であった。日独両国の医療、福祉関係者や研究者たちが参加。それぞれの取り組みに基づき、支援の在り方などを語り合った。

 両国の実践者、デュッセルドルフ市で認知症ネットワーク代表を務める医師のバーバラ・ヘフトさんと、熊本県菊池市の介護老人保健施設副施設長、松永美根子さんが基調講演を行い、住民との協働の必要性などを語った。

 ドイツでは1995年に導入された介護保険が認知症を想定しておらず、2003年に改正された。これを受け、デュッセルドルフ市で医療、福祉、行政関係者などと認知症ネットワークを設けたヘフトさんは「できるだけ長く在宅ケアし、それが難しくなると施設入所するが、その流れがスムーズなことが重要」と指摘した。支援ネットではまず、本人や家族のニーズを調査し、質が高く、自宅に近くて安価なサービスを検討したと振り返った。例えば、家族介護者の負担軽減のため、集いの場になる認知症カフェを運営している。研修カリキュラムを作り、座学や実地研修で養成したボランティアを活用しているという。

 「介護度が低い人への世話も必要。介護までいかなくても一緒にコンサートに行くことはできる」など、日常を支える大切さも強調。支援者の交流でサービスを工夫していると話した。

 松永さんは、認知症サポーター養成講座の受講者が研修だけに終わらないための菊池市の取り組みを紹介した。講座を受けた証しのオレンジリングにちなみ、認知症の人を見守る事業所などにオレンジリング型の目印を掲げる「大きなオレンジリングまちいっぱい運動」の展開を通じ、自覚や理解を広げていると報告した。

 ●集いの場で負担を軽減・ドイツ 孤立防止へ見守り運動・菊池市

 パネル討議には、基調講演をしたバーバラ・ヘフトさんと松永美根子さんに、ソーシャルワーカー(社会福祉専門職)のペトラ・ヴィーンスさん、デュッセルドルフ大の島田信吾教授が加わった。(司会は熊本学園大の豊田謙二教授、敬称略)

 -認知症のようで孤立している人への対応は。

 ヘフト 医師が訪問したり、家族支援のために関係者で協議したりする。

 松永 地域の相談員が何度も訪問する。精神科医も紹介するが、それは顔見知りになってから。関係性構築に時間をかける。

 島田 ドイツでは地域の認知症カフェなどで高齢者が気軽に交流できる。顔を合わせれば認知症も早く把握できる。ただ、日本の自治会や民生委員はなく、孤立への対応は課題だ。

 松永 「大きなオレンジリング」運動で近所の人と話し合ったり、心配な人を家まで送ったりする動きが出ている。専門職が支えるのは当然。市民が支えるコミュニティーが重要だ。

 -具体的な家族支援は?

 ヴィーンス 家族に多様な制度を伝える。スポーツクラブや警察、市民が、どうすれば認知症の人が地域で暮らし続けられるかと地域づくりをしている。

 島田 ドイツの介護保険では、在宅での家族介護が仕事として認められているため、家族への現金給付や、家族が4週間の休暇を取るための支援がある。

 -虐待防止も課題だ。

 ヴィーンス 家族介護で問題が起きそうならショートステイや施設入所を勧める。入所が全部悪くはないと助言するのも大切。

 -認知症の告知からケアが始まるのでない。その前に認知症カフェなどのつながりづくりが大事だ。

 ヴィーンス 認知症は社会全体の課題。私たちがつくる制度は将来、自分自身が利用することになる。認知症になる前に知識を身につけ、暮らしやすい社会にすること、思いやりを忘れないことだ。


=2015/03/19付 西日本新聞朝刊=

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