元世界王者「強さとは?」 鬼塚勝也さん、黒田征太郎さんが絵本

絵本「つよくなりたい」を出版した黒田征太郎さん(左)と鬼塚勝也さん 拡大

絵本「つよくなりたい」を出版した黒田征太郎さん(左)と鬼塚勝也さん

 イラストレーターの黒田征太郎さん(76)=北九州市=とボクシングの元世界チャンピオン、鬼塚勝也さん(45)=福岡市=が昨年9月、絵本「つよくなりたい」(石風社、1404円)を出版した。いじめを受けた孤独な少年が強くなるための修行に出るという物語。知り合いの紹介で会い、すぐに意気投合したという2人に「強さ」について語り合ってもらった。

 -なぜ絵本を作ることに。

 鬼塚 黒田さんから誘われて。最初は「殴る」というテーマでした。僕がボクシングで培った経験などを形にしたいということでした。

 黒田 僕は本や新聞など手触り感のあるものが好きなんです。ボクシングも人と人とが触れ合うわけでしょ。近いものだと。それと、鬼塚勝也に興味を持った。今、いじめとか多いでしょ。子どもだけじゃなく、国が国民をいじめている気がする。いじめで殴るのはボクシングの試合で殴るのとは絶対違うはずですよね。だから、ボクサーとして闘い続けてきた鬼塚勝也の「殴る」ということに対する解釈で、何か作りたいと思いました。

 -「本当の強さ」をテーマにしたのはなぜですか。

 鬼塚 世界チャンピオンになったら強くなれると思っていたけど、僕は強くなれていない。黒田さんと話をしたり、絵を見たりする中で、強さって腕力じゃないと思った。本当の意味での強さを僕は手に入れたいし、そういうものを表現できたらと。

 黒田 世界チャンピオンにまでなった鬼塚から「つよくなりたい」というタイトルが出てきたとき「やってよかった」と思いました。

 -2人にとって「本当の強さ」とは。

 鬼塚 分からないですね。ただ「この人強いな」って思うことはあります。気配りができたり、人を理解できる優しさを持っていたり。

 黒田 多分一生分からないと思うんですよね。ただ、僕は人間ほど権力志向の強い生き物はいないと思う。だから地震や津波は、人間なんて決して強くないんだっていうことを教えていると思うんです。そう。だから、僕たち人間は弱い存在なんだ、でも生きていくんだっていうことを本気で思えたら、強いと思う。

 この絵本で子どもたちに「世界チャンピオンがまだ強くなりたいって言ってるんだよ。じゃあ強いって何だろう」って問い掛けたい。「生まれてきてよかったな」って思ってもらえるための、ちっちゃなツールになれたらいいですね。

    ×      ×

 独りぼっちでいじめられてばかりの少年が「強くなりたい」と修行に出ます。向かった先は「つよい主」がいるという森。森の主であるフクロウに、少年はどうやったら強くなれるか聞きます。

 少年は木を相手に殴ったり、ハチの攻撃に耐えたり、トレーニングに励みますが、「消えろ」「ばか」など聞きたくない言葉がやりのように飛んできます。「助けて!」。そのとき、地面が揺れだして-。

 イラストレーターの黒田征太郎さんとボクシングの元世界チャンピオン、鬼塚勝也さんが少年の姿を通して「本当の強さって何だろう」と読者に問い掛けます。フクロウが少年を諭すときの「争うよりも仲良くすることの方が勇気がいる」という言葉がヒントを与えてくれます。

 ●「つよくなりたい」
 ★絵 黒田征太郎
 ★文 鬼塚勝也
 ★石風社、1404円


=2015/03/24付 西日本新聞朝刊=

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