介護職の賃上げどうなる 4月報酬改定 国見込み 月1万2000円 「満額は無理」 福岡の施設

入所者の食事の介助をする松隈暢哉さん(左) 拡大

入所者の食事の介助をする松隈暢哉さん(左)

 介護保険サービスの公定価格「介護報酬」が4月に改定される。基本報酬が減額される一方で、介護職員の待遇改善に取り組んだ事業者には報酬を上乗せする「介護職員処遇改善加算」が拡充される。政府は、この加算で常勤職員1人当たり平均月1万2千円の賃上げにつながると説明するが、可能なのか。福岡市東区の特別養護老人ホーム「いきいき八田」(定員73人)を訪れ、現場から考えた。

 「おやつですよ。どうぞ」。介護福祉士の松隈暢哉さん(32)はスプーンにゼリーを載せ、女性入所者の口に運んだ。介護専門学校を卒業後、この施設で働いて11年。「やりがいはある。ただ、将来が不安です」

 月4~5回の宿直勤務をこなす。認知症で夜中に起き出す人、呼び出しコールを何度も鳴らす人がおり、ほとんど仮眠はとれない。それで、月々の手取りは約19万円。

 妻も別の介護施設で働いており「今はやりくりできるが、子どもが生まれたらどうなるか…」。育児で働く時間が減れば、収入も減る。腰痛などで辞めていくベテラン職員がいる一方、若手職員がなかなか入ってこないのも気にかかる。処遇改善加算はニュースで知ったが、「本当に1万2千円も上がるのかな」と半信半疑だ。

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 「いきいき八田」を運営するのは、社会福祉法人「ちどり福祉会」。毎年4千円前後の定期昇給を維持するなど待遇改善に積極的で、年約1800万円の処遇改善加算の上乗せは見込め、昇給はできる。

 だが「1人当たり月に7、8千円を上げるのが精いっぱい」と、事務局長の和田峯ゆき江さん(61)は明かす。加算対象は介護職員だけだが、全職員の4割を占める看護師や事務職も昇給しないわけにはいかない。基本報酬の減額で年間約3千万円の減収となる見通しで「1万2千円も上げるのは無理」という。

 政府が基本報酬減額を決めた背景として強調するのが「介護事業者の平均利益率は8%程度で、中小企業の2・2%と比べて高い」「特養の内部留保は1施設当たり約1億6千万円ある」の2点。

 これに対し、ちどり福祉会の利益率は毎年度1・0%ほど。内部留保に当たる預貯金は運営する2施設の合計で約1億5千万円。3カ月分の運転資金として必要という。

 統括施設長の山本明美さん(60)は「収支はぎりぎり。採算度外視で真面目にやっている施設も多い。加算で基本報酬減額による減収分は補えず、職員の賃金を十分には上げられない」と嘆いた。

 ●平均賃金10万円低く 全産業比

 介護職員は重労働の割に低賃金だ。賃金構造基本統計調査(2012年)によると、福祉施設の常勤介護職員の平均賃金は月約21万8千円で、サービス業などを含む全産業平均と比べ約10万円も低い。医療・福祉分野の他職種と比較しても低い=表参照。

 このため、専門学校などの介護職養成機関では、定員割れも相次いでいる。都市部の介護施設では職員を募集しても集まらず、施設閉鎖やベッド数削減などに追い込まれている。

 一方、厚生労働省の推計では、団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる25年には約250万人の介護職員が必要になる。現在は約180万人で、現状のペースで養成しても約30万人が不足すると見込まれ、介護の人材難は深刻だ。


=2015/03/26付 西日本新聞朝刊=

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