食物アレルギー 学校、市町村で対応に差 教諭と保護者 連携重要

 東京都調布市の小学校では2012年、乳アレルギーの小5女児が給食の誤食で死亡する事故が起きた。アナフィラキシーショック(血圧低下や意識障害などの急性症状)など重症の食物アレルギーがある子どもを持つ親にとって、給食は生死にかかわる問題。入学前に不安な保護者も多いだろう。学校とどのように連携したらよいのか。

 福岡市の女性(26)は、目の前で起きた光景に体が硬直した。乳製品のアレルギーがある児童と机を並べて給食を食べていた担任が、リサイクルのために自分が飲んだ牛乳パックを児童の顔のすぐそばで破いて折りたたんでいた。

 3月上旬、長女が入学予定の小学校に頼み込み、給食の様子を見学させてもらったときのことだ。長女は卵と乳製品のアレルギー。アナフィラキシーショックを和らげる自己注射薬「エピペン」が手放せない。

 「乳製品のアレルギーがある子どもは牛乳が肌に触れるだけでアレルギー症状を起こすのに…」。校長や主任クラスの教諭に、机や床などにこぼれた牛乳に触れるだけで症状を起こす危険性があることを訴えた。給食直後の教室の掃除や、クラス全員の手洗いをお願いしたが、「徹底はできない」とにべもなかった。

 「食物アレルギーがある子どもに給食を食べさせている学校の先生たちが、牛乳に触れるだけでアレルギー症状が出ることを知らなかったことがショックだった。娘を通わせて本当に大丈夫か…」

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 女性は不安なまま3月末、福岡市で開かれたエピペン所持児童の学校給食への対応を考える勉強会に参加した。「実際に新学期が始まってから先生たちとじっくり話せば大丈夫」。先輩ママたちの優しい口調のアドバイスに、涙目で何度もうなずいた。

 重症な子どもたちは、給食の時間をどのように過ごしているのか。

 卵、乳製品、魚が食べられない福岡県糸島市の小4男児は給食のとき、教室の一番後ろの隅に机を移動する。配膳場所から各児童が自席に戻るルートには、この男児が入らないよう徹底されている。卵、牛乳、そば、ピーナツがだめな福岡市の小5男児は、朝礼で給食の献立に沿って「きょうは○○が危ないです」と宣言する。クラス全員がその日の“危険食材”への意識を共有する。

 勉強会を主宰した福岡アレルギーを考える会の野田朱美会長は「学校にはいろんな親からいろんな相談がいっぺんに来る。食物アレルギーは命にかかわる問題だということを、資料などを使って丁寧に説明してほしい」と助言する。

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 文部科学省の2013年調査によると、小中高約2万9千校に通う1015万人を対象に行った調査では、食物アレルギーがある児童生徒は4・5%の45万3962人。22人に1人の割合だ。文科省は従来のガイドラインを強化した指針を3月に策定。全市町村にマニュアルをつくるよう要請したが、市町村や学校間で対応に温度差がある。

 30年近く食物アレルギーの診療に当たっている国立病院機構福岡病院(福岡市南区)の柴田瑠美子医師は、乳幼児期に診察した患者が通う小中学校の教諭向けに、ボランティアで出前講座を続けている。(1)乳製品のアレルギーは誤食、誤飲より触れることで起きることが多い(2)床や机に落ちた牛乳は水拭きしてもだめで、洗剤で洗う(3)エピペンは絶対に冷蔵庫で保管しない-など具体的に指摘した。「食物アレルギーの発症原因や症状形態は一人一人で全く異なる。給食の悲劇を防ぐため、親と先生は密接に連携してほしい」と提案している。


=2015/04/01付 西日本新聞朝刊=

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