介護「要支援」市町村事業に 自立支援へ地域一体 先進の大分・杵築 九州34自治体が開始 本年度内見込み

要支援者の状態改善を目的とする大分県杵築市の自立支援型デイサービス「笑顔の詩」 拡大

要支援者の状態改善を目的とする大分県杵築市の自立支援型デイサービス「笑顔の詩」

 要介護度が比較的軽い「要支援1、2」の高齢者向けの介護サービスの一部が4月、全国一律事業から市町村の独自事業に移行され始めた。2017年度まで3年の移行期間があるため、全国的に様子見の自治体が多いが、大分県杵築市では「地域の課題に柔軟に対応できる」と先進的に取り組んでいる。 

 赤魚、ゴボウ、シイタケ、春雨…。書き出された食材を見ながら、高齢者がメニューを出し合う。メニューが決まれば自ら包丁や鍋を持ち、昼食を調理する。

 大分県杵築市のNPO法人「笑顔」が運営する自立支援型デイサービス「笑顔(ほほえみ)の詩(うた)」。2年前、要支援者やその予備軍を対象に、市の委託で開いた介護予防拠点だ。今年4月から、新しい要支援者向け通所型サービスの一つとなった。

 72~92歳の約20人が週1回通ってくる。体操や買い物、利用者同士の雑談の時間もある。利用料は昼食込みで1人千円。約100平方メートルの施設は一般の民家同様、階段や段差もある。看護師や介護福祉士など専門職4人、ボランティア2人の計6人が見守る。

 自宅に閉じこもりがちだった高齢女性(90)は、認知症を心配した娘が市に相談したのを機に通い始めた。「人と話せて楽しい」と笑う。最近、外出が増え、自宅でも料理するようになった。

 他にも要支援の人が6人いたが、全員状態が改善し、要介護認定を“卒業”した。理事長の後藤康代さん(57)は「要支援者は状態が改善する可能性がある。できないことを補う介護サービスを提供するだけでは、可能性をそいでしまう」と「手を出さない介護」を徹底している。

 杵築市は人口約3万人、高齢化率は33・6%。2006年は要介護認定率が24・8%と、全国平均(16・7%)を大きく上回っていた。

 12年2月から、ケアマネジャー、理学療法士、管理栄養士、歯科衛生士など多様な専門職がケアプランを検討する「地域ケア会議」を週1回、開催。要支援者の自立を支援するケアを検討し、実践している。

 会議で検討した高齢者のうち、13年度は状態が改善した人が32%、「要支援」認定が外れた人が16%に上った。14年の要介護認定率も19・5%と、2年で2・1ポイント減少するなど、一定の効果が表れた。

 市福祉推進課長の江藤修さん(51)は「地域ケア会議を積み重ねてきたことで、要支援者に必要な事業や地域の課題が見えていたため、新事業への移行も順調だった」と話す。

 課題は採算性だが、介護事業所など専門職による事業が軌道に乗れば、ボランティアを活用した運営に切り替えていく方針。新事業などに使う介護予防サービス給付費は、17年度までに約6400万円抑制できる見通しだ。

 新事業への移行は「要支援者の切り捨て」との批判も根強いが、江藤さんは「機能を改善して要介護認定を卒業する意識は重要」と言い切る。市の推計では、団塊世代が75歳以上になる25年度の要介護認定率は20・5%、介護保険料(基準月額)は8995円まで上がるが、介護予防やサービス適正化などの施策を徹底すれば認定率19・1%、保険料は7628円に抑えられる。

 九州7県で15年度中に新事業を始める自治体は、福岡9、佐賀ゼロ、長崎3、熊本4、大分11、宮崎1、鹿児島6と計34にとどまる見込みだ。サービスの地域間格差が懸念される中、自治体の力が試されている。

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【ワードBOX】要支援者向け介護サービス

 7段階ある要介護度のうち、軽い方から2段階の「要支援1」「要支援2」の人を対象にした訪問介護と通所介護(デイサービス)が、2017年度までに市町村の事業に移される。これまでは全国一律の内容や料金だったが、移行すれば市町村が事業の内容や料金、人員基準などを決められる。


=2015/04/09付 西日本新聞朝刊=

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