自転車保険 万一に備え 事故で高額賠償の恐れ 加入2割程度 義務付ける県も

歩道で歩行者の間を縫うように走る自転車 拡大

歩道で歩行者の間を縫うように走る自転車

 新年度に入り、自転車で通勤、通学を始める人もいるだろう。手軽に乗れる一方、事故を起こせば加害者にもなりうるが、自転車保険に加入している人は少ない。子どもの事故で保護者が多額の損害賠償を求められるケースもあり、保険加入を義務付ける自治体も出てきた。

 警察庁によると、自転車が絡む交通事故は2014年に約10万9千件発生し、このうち542件で死者が出ている。全体の約8割が車が相手の事故だが、自転車同士や歩行者との事故も約5400件に上った。

 自転車は道路交通法上、軽車両の扱いとなる。車と同じように、交通ルールを守らなければ刑事罰の対象となり、事故でけがをさせれば治療費などの賠償責任も負う。運転免許は必要なく、子どもが加害者となる例も少なくない。

 神戸市で小学5年の男児が60代女性に衝突し、重傷を負わせた事故では、神戸地裁が13年、男児の保護者に約9500万円の支払いを命じた。子どもに十分な指導をしていなかったとして、親の監督責任を認定したのだ。

 自転車事故に詳しい弁護士の関口信也さん(52)=福岡市=は「スマートフォンを操作するなど『ながら運転』で歩行者に接触する事故も多い。自転車側への社会的非難は強まり、賠償金は高額化している。万一に備えて保険に入っておく方がよい」と指摘する。

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 車やバイクの所有者には自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入する義務があるが、自転車はこうした制度がなく任意保険を利用する。

 任意保険は、他人にけがをさせたり、物を壊したりしたときに補償する「個人賠償責任保険」と、自分のけがに備える「傷害保険」の二つを組み合わせたものが多い。個人賠償責任保険は、既に加入した火災保険や自動車保険などに、特約として付いている場合も。クレジットカードや携帯電話の利用者が月額数百円で加入できる保険もある。

 年額数千円の保険料で、3千万~5千万円の賠償金が主流だが、最大1億~2億円を補償する商品も出てきた。補償の範囲は細かな条件があり、契約前にしっかり確認する必要がある。示談交渉の代行サービスがあるかも選ぶポイントとなりそうだ。

 日本サイクリング協会(東京)は「こうした任意保険に入っている人は、自転車を持つ人の2割程度とみられる」と話す。兵庫県が13年に実施した調査でも加入率は24%にとどまった。無保険で事故を起こし、賠償金を支払えない事例もあることから、同県は10月から条例で、自転車の利用者に保険加入を義務付けることにした。「自転車の危険性を乗る人に認識させ、安全運転を促す狙いもある」という。

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 事故が起きてしまったらどうすればいいのか。

 けが人がいる場合は救護を優先した上で、軽い事故でも警察に連絡する。届け出がないと交通事故証明書が発行されないからだ。

 相手方の連絡先、事故の状況などはメモにまとめておこう。事故証明書や医師の診断書があると、保険金の支払いや示談交渉がスムーズに進みやすい。

 賠償問題が解決しないときは、裁判所の民事調停や、都道府県の弁護士会が運営する紛争解決センターに相談できる。訴訟より手続きが簡単で費用も抑えられ、話し合いの結果は確定判決と同じ法的効力を持つ。

 もちろん何より大事なのは、交通ルールやマナーを守り事故を起こさないことだ。


=2015/04/11付 西日本新聞朝刊=

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